1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:学び合いの場

「美味しさのイノベーション」メモ

参加者16人。活発なディスカションでした。終了後の参加者のメモも盛りだくさんでした。

【まつもとかつひで(日本オリエンテーション主宰)メモ】
1.美味しさは主観的
・状況開発と美味しさ開発
・ひとりで食べるより、家族、仲間で食べることが美味しさにつながる
・旅館の朝食が美味しいのはなぜなのか
・空腹は最大の快楽。空腹で食べると美味しい、疑似的空腹とは
2.文化としての美味しさ
・健康味覚
・既存の枠を取っ払ってみる(コスト、生産性、などの制約を取り払って)、 職人的プロダクトアウト
・異文化の食 手食
3.美味しさとは、今までとは違う新しい味、食べる経験度
情報マネジメントの5つの原則(立命館大学教授 佐藤典司)が美味しさづくりのヒントになるのでは
1) 情報の差異化→消費者からみた味の差異化
・違いがなければ情報ではない
・情報の中身を優先する過ち
2) 情報の統合化→味のコンセプトを明確にする
・情報の価値は、ある目的に向かって統合されなければならない
・わずかなズレがすべてを台無しにする
3) 情報の累積化→何回も食べてもらうことを考える、飽きられないこと
・累積されなければ非効率
・情報の統合化は空間的、情報の累積化は時間的なもの
4) 情報の最新化→伝統を革新する
・常に新しい要素を取り入れることが必要
・過去、現在から未来へ
5) 情報規模の最適化→ときどき無性に食べたくなる
・自分自身の情報で差異がなくなる
・新たなブランド体系の構築
・限定販売の手法
4.客観的・絶対的な美味しさとは
・人間生理味覚、本能的美味しさ 甘い、油脂、栄養の高いものを美味しい
・できたて味覚→ノンストレス開発
5.美味しさのイノベーション
・“食べる”から、“喰う”食品
・ 動物本能の視点
ライオンが内臓を食べる、クマが鮭の内臓を食べる
・牛乳=血
・香水の開発に学ぶヒントは
 良い香りをつくるには、動物の分泌物をほんの少し入れることによってよい香水をつくる。
6.美味しさは思想哲学ではないか
・「食は快楽である」

【高橋正二郎メモ(日本オリエンテーション客員主席研究員)】
1.おいしい体験は、総じて印象的なシチュエーションや味を盛り上げる演出が大きい働きをしていることが多いが、味そのものもやはりおいしいことを再認識したい。
2.商品開発の現場でも、おいしい商品として売れるための手を尽くしているが、革新的な味の開発よりも部分的な改良や二次展開による売り上げ確保に追われている現状もある。
3.飽食、サチュレーション、満腹の王様、口が贅沢になった、おいしさに慣れる、という言葉が頻出するほど、味に関しては成熟の煮詰まり感が強いが、反面新しい味が求められている証とも取れる。
4.マーケティング的な立場から見れば、川下的な手法でサポートするのは効率的で有効だが、今日のこの場は味覚の官能空間を広げる新しい味へのチャレンジの一歩であって欲しい。
以下、妄想。
◇産消一致が売りモノの野菜工場だが、インドネシアでも不可能な強い光で栽培したマンゴーとか、10年かけてゆっくり実らせたナスなど、新しいおいしいものの作り方が考案される余地がありそう。
◇500年ほど前、人類の飢えを救う食材がアンデスの山奥からもたらされた。楽天家の故、人類を救う第2、第3の食材が見つかることを漠然と期待している。アフリカの密林か、オーストラリアの砂漠か、太平洋の海底か、探索のおこぼれで珍味が先に見つかるかも。

【参加者のコメント】
<Aさん>
私がおもしろく感じたのは
1.究極の状態で味を合わせることができれば感動を生み出せる
2.シェアすることにより、より美味しく感じられる
3.強いけれどまろやかな味
ひょっとしたら、みんなで何か病みつきになる味の商品を持ち寄って試食したら、もっと踏み込んだ議論が出来て面白かったかもしれませんね。

<Bさん>
1.本能には勝てない
 ・甘いもの、しょっぱいもの、油リッチのもの
 ・ガマンさせられた時の飲食物
 ・フレッシュなもの(フレッシュと感じるもの)
2.学習によるヤミツキ
 ・酸味、辛味、苦味
 (学習により「危険だから嫌い」→「大丈夫だから食べられる」は理解できるが、これが嗜好になるのがハテナ)
 ・加齢につれ甘いもの、油っぽいものが苦手になる→さっぱり系が好きになる
 (でもしょっぱいものが苦手になる、はあまり聞かないなぁ。薄味とは違うと思うし)
 ・【慣れる】と【飽きる】とは…?
3.思い出の味
 ・シチュエーション(場所、人、気分…)
⇒【結局、本当にオイシイって何だろう?本当にオイシイものは減った?】
 ・絶対的な【オイシイ】が分からないな
  (誰でも、いつでもオイシイと感じる)
 ・本当にオイシイ、イノベーションを追求している企業が減った?
 ・革新的なものを近年見なくなった。思い切った検討をしてみてはどうか?
  (あまりに斬新なものは消費者が受け入れてくれるのかは分からないが…)
個人的には、【味・市場のタイミング】という言葉が印象的で、「温暖化現象もあってプレモルの味が気に入られ始めたのかも…」という説を聞いて、今後の市場は【南国に学べ】がキーワードなのかも、と思って帰りました。(さっぱり味、マテ茶(情報として?)、冷やし鍋…など?)

<Cさん>
1.おもしろいと感じたこと
・生理的おいしさと状況的おいしさ
・物理味覚(食感)と化学味覚(味)
・日本らしい美味しさ→「生」の食文化
・出来立てはおいしい→出来立てを表現できる
・美味しいと感じるもの=生き残るのに必要なもの
・手食ってどうか→触感(手触り、温度)が加わりおもしろいと思います。
2.感想
「全く新しい食のイノベーションは可能なのか?」が今回のテーマでしたが、会の中では、チャレンジはしてみたいけれど、どうすればいいのか?本当にそんなものあるのか?という疑問を自分も含め皆さん感じているように思いました。
消費者から見て“長々説明されなくても一瞬でわかる違い”を持つもの、小手先の違いではない何かすごいと思えるもの、生活がかわってしまうほどのもの、そういう何かを探したいし、作りたいと思いました。
“違和感” “驚き”がポイントかと思いました。単純な他社との違いではなく、そのカテゴリーの概念をかえるような、でも消費者の頭にはすんなり入るような新しさでしょうか。
また、2回目の開催も是非お願い致します。
男女差による食へのヤミツキ度、ヤミツキになる要因の違いみたいなところも気になっており、そのような話もできたらと思っております。次回はもう少しディスカッションに入りこんでいきたいと思っております。

<Dさん>
1.美味しさとは何か
オケージョン(場面)
・どこで食べるか(場の雰囲気)
・誰と食べるか(共感)
・いつ食べるか(時間)
・どんな気分で食べるか(心理状態)
・どんな状況で食べるか(生理状態)
・どうやって食べるか(方法/手段/作法)
物理化学的特性
・温度
・テクスチャー
・呈味
・栄養成分
ストーリー/ヒストリー
・誰がつくったものか(属人的情報)
・どうつくられたものか(技術的情報)
・由来(歴史的情報)
2.どんな時に美味しいと感じるか
共通項は「よろこび」
・共感(心理的よろこび)
・食感、呈味(口腔刺激・・・身体的よろこび)
・補給(生理的よろこび)
・初めての経験(知的よろこび)
3.おいしさをどうプロデュースするか
・昔から知っているけれど、決して昔と同じじゃない味
・懐かしさと新しさの融合・・・リプロデュース
・アロエ味はグレープフルーツ味
・らしいと感じる味をどう作るか・・・味は情報によって規定され得る
・おいしさはどこかで納得性につながっている?
・情報に対する合理性がポイントか
・マーケティング的には、様々な美味しさの要素をPKGやコミュニケーションを通してリアルなイメージとして想起させることが重要
・おいしさがあれば、消費に繋がるという関係は一概に成立し得ない
・消費に繋がるためには、「美味しさ」にまつわる記憶のインパクトが必要では?
・徹底してこだわり抜けば、プロダクトアウトが強いのではないか?
 → プロダクトアウトも、アウトプットのマーケットイメージがなければコンセプトが描けないのでは?
(マーケットイン、プロダクトアウトという考え方は発想のベクトルであって、二値論理ではないと思います。)
4.美味しさのイノベーション
・イノベーションとは「驚きの創造」
・今まで食べたことのない味、食べ方、食感の面白い発想はないか?
5.製法のイノベーション
・食品衛生法でNGだけれども本当は美味しい食品・・・技術革新でOKになる方法はあるかも知れない。
シチュエーションのエンジニアリング
・出来立て、超フレッシュネス・・・出来上がって30秒しか持たないおいしさとか・・・
・東京お菓子ランドは「ここでしか食べられない」というシチュエーションと、出来立てのフレッシュネスがコンセプト。
6.味覚のイノベーション
・キワモノmixtureの発想はないか?
・フレグランスの世界はサブノートにオフフレーバー成分を持つものが多い。
(フレグランスは分画精製成分の合成工学、食品はもともと嫌悪成分を含んだクルード(粗製)成分の調整工学)
 → アジテーションとしての視点提起。カップリングの面白さは追及してみる価値はありそうです。
7.食は哲学の時代〜食は快楽なり〜
・食の快楽は独自性であり、また感動である。
・手食スタイルはどうか。食の原点回帰、根源的よろこびへの訴求?
・手で食べていないものを手で食べられるようにする発想は面白い!
・ハンバーガーや手巻き寿司は、新しい時代の手食文化。
・手で喰える蕎麦やパスタはできないか?
こんなところでしょうか。いろいろ思考が巡り、大変刺激になりました。

<Eさん>
1.食品メーカーは、微差のなかでの差別化を堂々と『差別化』と言い切っているが、本当に消費者の方々に伝わっているのか?このままでいいのか?もっと遊び心を追究してもよいのでは?と改めて感じました。
2.これだけ美味しいもので満ち溢れているニッポンは、お客様の声を聞きながら作るのではなく、職人的思い入れでプロダクトアウトする。例えば、カップヌードルのような、国民の食生活を一変してしまうようなイノベーションが必要ですね。言うのは簡単ですが…
3.また、味づくりに関しては比較的おとなしめな乳業メーカーで仕事をする私にとっては、他の食品メーカーの皆さまの考え方、豊富な味の表現にとても触発を受けました。今回の触発を大切に乳業メーカーという殻を打ち破れるように、視野を広げて行ければと思います。
4.最後に!「おいしい」は「味」そのものだけではなく、パッケージのもつ世界観、雰囲気づくりも大変重要な要素であることを改めて気づかされました。

<Fさん>
美味しさの本質について、悩み甲斐のある時間でした。
1.野生の味覚を取り戻す
チンパンジーやボノボが美味しいと感じる味にヒトも共感できることって、あるのでしょうか。
果物は皮ごと食べたほうが美味しいとか、肉は血の味がしたほうが美味しいとか、ミルクは人肌温度が一番美味しいとか。

<Gさん>
「おいしさ」というのは実に曖昧なものだなと感じました。
例え同じ物を食べたとしても、その時の場所・メンバー・自分の体調などによって美味しさは変わるし、何度も食べていればおいしく感じることもあったり、その逆もあったり…。
そんな曖昧な人の味覚において、難しいですが、常においしいと感じてもらえる物を作りたいなと思いました。それにはやはり、「美味しさのインパクト」が必要なのかなと思います。「美味しさのインパクト」って何か分かりませんが、「記憶として残るおいしさ」を目指したいなと思いました(漠然としていてすみません)。

<Hさん>
・「美味しい食品」は飽和状態に近い。
・イノベーションの必要性と可能性を見いだすには、消費者ニーズも考慮する必要があるだろう。

<Iさん>
印象に残った言葉としては、「食は快楽!」でしょうか。
当社はキッチンを提供するメーカーとして、このテーマにどう対峙していくべきか、構想を練っていきたいと思います。
是非、「美味しさイノベーション2」の開催をご期待しています。