1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第3号

配信日:2012年10月1日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.3□■
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英 の共同メルマガです。

◆INDEX
1.『あと味は「後」のみにあらず』大西正巳:後味はリピートにとってだいじなポイントです。アクワイアードテイスト(経験を積み次第に好きになる大人の味わい)に転じることもあり、クセの要素でもあります。
2.『味・香り・感触を記述する』高橋正二郎:感覚を記述することはSDPにとって基本的で重要な部分です。官能評価の実施、用語や表し方に悩んでいる人に対するヒントになると思います。
3.『"快"のキーワードを考える』松本勝英:快のキーワードをあげてみました。商品化に向けて展開したくなるものが沢山ありますので、みなさんも考えてみてください。

■「あと味は「後」のみにあらず」大西正巳
酒類や食品だけでなく、色々な分野で後味が評価の対象となっています。人の言動や出来事に対しても「後味の良し悪し」が言及されることもあり、味覚だけでなく五感、価値観、感情の多重フィルターを経た結果として表れます。
酒類の場合も後味の評価は重要であり、好き嫌いを決定づけることも少なくありません。ウイスキーの官能評価では、香りを利き(ノージング)、口に含んでフレーバーと味わいを利き(テイスティング)、そして後味(アフターテイスト)では酸味、甘み、苦味、収斂味、バニラ味やスモーキー、スパイシーな感じの余韻をみることが中心です。後味は、基本的には味わいや刺激感の残り方/キレ方によりますが、舌や喉に納まるバランスのよい余韻、フックの効いた余韻、後々まで濁りや違和感の残るものなど様々です。いずれにせよスペクトル的に表れてくる後味には少しミステリアスな印象を持ちますが、アフターテイストがアクワイアードテイスト(経験を積み次第に好きになる大人の味わい)に転じることもあるでしょう。飲料・食品の隠し味的なほろ苦さも他の香味とうまくかみ合うとクセになる要素が出てきます。
飲食時には、無意識であっても我々は「見た目」に「先香り→先味→中香り→中味→後香り→後味」の流れで嗅覚・味覚・触覚/食感等で評価していると考えられます。後味の評価というのは最後になりますが、実は先香り(口に含む前のトップノート)に始まるこの流れ全体の結果が反映されます。つまり「後の味わい」とは言うものの中味の特徴が総括された感じとなり、特にアロマやフレーバーの残像が大きく影響してくると思います。そのため定量的な官能評価であっても、ある時点の静的/部分的な評価だけでなく、動的つまり時系列的で立体的な官能変化の捉え方や表し方も必要になります。後味とは人の後ろ姿のようなもので、好奇心や想像力を湧き立たせます。モノが示す後ろ姿と振る舞いから育ち(造り)や性格が浮き彫りになり、余情や固有の面影が描かれてきます。商品の後ろ姿や余韻のデザインは勿論大切ですが、同時にそれが最も映える印象的な背景や状況の開発、そして上手なセッティングが重要だと思います。

■「味・香り・感触を記述する」高橋正二郎
前回、「思いをことばに、ことばをかたち」の話をさせていただきました。味や香りや感触といった感性価値の部分もこの「思い、ことば、かたち」という経路をたどることになりますが、思いのままにことばをかたちに到達させるのは意外と難しいようです。その最大の難関が「ことば」→「かたち」への受け渡しです。思いからことばへの進展は同じ人が行うことが多く、思いは企画書ということばの中でも維持されます。ところが、ことば→かたちのところは担当者が変わることが多く、伝達がうまくいかないことがあります。この過程は、企画書に綴られたコンセプトという概念を具体的な仕様に展開する訳で、概念をソフト、仕様をハードと見做して、ソフトからハードへのSH変換といい、このSH変換を確実に行うことが重要です。仕様が寸法や重量のように計測が可能で、しかも共通単位が存在する事柄は円滑に変換され、しかも定量化されていますので、視覚化への発展も容易です。設計図はこうした背景によってできたもので、試作品をいちいち製作することなく紙の上での検討や議論が可能になります。
一方、味や香りや感触のような感性価値は適当な測定法が見当たらず数値化が難しいと思われていますが、感性価値のSH変換では官能評価の登場になります。生理学、心理学、統計学により構成された官能評価を適切に運用することにより、感性価値は機器測定と同じように一意性、客観性、再現性などの科学的性質を備えた計量として扱うことができます。定量化されれば視覚化が可能になり、味や香りや感触のような感性価値も設計図が描けることになります。味や香りや感触の感性価値の視覚化は、クモの巣状になったレーダーチャートの形をしたQDA(定量的特性描写法)とするのが一般的です。この「ことば」に相当するQDAを用いれば、設計図上で議論ができるように、味や香りや感触の感性価値につい て議論ができ、より深い検討や新しい味・香り・感触などの感性価値の開発が可能になります。

■「"快"のキーワードを考える」松本勝英
◆ "快"は商品開発の大きなテーマです。
背景としては
・脳と心を気持ちよくマッサージする時代
・ストレス、アトピー、花粉症などの不快があふれている
・快眠、快食、快便などの生活基本の見直し
・空腹感;肉感の中で一番すがすがしい快感は空腹感である(内田百聞)
「快自動車」「快ボールペン」「快ウェア」「快菓子」「快化粧品」「快医薬品(ちょっと問題かもしれませんが)」を創ってみたいなと思っています。
◆そのための"快"のキーワードを考えてみました。
<"快"のキーワード>
・カワイイ系;可愛い、可憐な、愛らしい
・イキイキ系;みずみずしい、生き生きした、動きのよい、活発な、浮き浮きした、軽快な
・ゲンキ系;元気な、健康な、健全な、明るい、輝く
・アンラク系;暖かい、穏やかな、ゆっくりとした
・ミカク系;甘い、味わいの深い、旨い
・アンシン系;安心な、安全な、無事な
・プレステージ系;権威のある、豪華な、光栄の、高級な、高尚な、贅沢な、豊かな
まだまだいろいろ出てくるのでは。
◆どのような"快"商品を、どのような感覚で開発するか、おもしろい開発テーマです。

皆さんのご意見、投稿大歓迎です。

≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■松本勝英(まつもとかつひで)
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを29年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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