1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第8号

配信日:2013年3月1日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.8□■
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英 の共同メルマガです。

◆INDEX
1.『官能エキスパートの落とし穴』大西正巳
目の前のモノをみている積りでも実は過去にみたモノを無意識にみている(イメージしている)ことがあります。官能評価とはモノとの真剣な対話であり、自分自身との格闘でもあると思います。
2.『昭和型官能検査と平成型官能開発』高橋正二郎
昭和のころ生産現場の品質管理で大活躍した官能検査の能力を生かして、平成の今、新しい価値としての感性価値の開発に活用すべきと考えます。苦戦中の日本の製造業に求められている道のひとつとも思えます。

■「官能エキスパートの落とし穴」大西正巳
官能評価を日々積み重ねると、必然的に自他社製品や素材のフレーバー・プロファイル(QDAチャート)が頭の中の引き出し(データバンク)に整理・保存されます。また関連する様々な品質データや製品情報(製造技術、広告/宣伝、顧客の評価等)もセットになり記憶されていきます。これらは貴重なライブラリーであり財産ですが、個人レベルではノウハウも含めて暗黙知の源泉です。
一方で、官能経験豊富なエキスパートやプロだからこそ陥る問題点も出てくると思います。例えば、目隠しされたサンプルであっても、テイスティングすると直ぐに引き出しの中の具体的な「製品名」や香味の「表札」などが浮かんできます。そのため目の前の実際の香味を忠実に描写している積りでも、過去のイメージや香味プロファイルの影響を受けている恐れがあります。場合によってはそれを無意識に転記してしまうこともあり、これでは正しく官能評価したことにはなりません。また思いこみが先行するとサンプルが発する有用な「ノイズ」を、つまり潜在する「シグナル」を見落としてしまうこともあります。そして結果的に自分の好む方向に他を誘導してしまう危険性も出てきます。
これは製品名を"当てる"ことに関心を持ち過ぎる、あるいは"良し悪しや順位付け"の結論を急ぎ過ぎることが背景にあると思います。目隠しに限らず、たとえオープンであっても、テイスティングでは分析機器になったつもりで自分の感覚(センサー)をニュートラルにしてサンプルの主張に意識を集中し、全身の感覚細胞で"診る"ということが大切です。まずは官能的な特性(香味の質や強度)を素直に把握し、その上でサンプルの生い立ちや強み・弱みの考察、あるいは様々な2軸マップによる位置付けの評価、今後の打ち手案づくり等を行うべきだと思います。
エキスパートやプロになると官能評価で発する言葉の重みと結果の影響力が増し、また自身のプライドや専門性に対する他人の評価が気になると思いますが、どのような状況でも「官能精神」と「謙虚さ」が大切になります。常に「心・技・体」とコミュニケーションのレベルアップを怠らないのが一流の官能プロだと思います。

■「昭和型官能検査と平成型官能開発」高橋正二郎
官能検査は官能の力を利用した検査で、官能開発も官能の能力を活用して価値を開発することです。1980年ごろ、日本の製造業は"Japan as No.1"などと言われ、その強勢を世界に誇っていました。当時の品質管理の行き届いた日本の製造現場では、官能検査も「不良を出さない」という掛け声のもと、大活躍をしてきました。
ところが平成の現在、諸外国の巻き返しやグローバル化、多少の慢心もあって、お家芸の品質管理の勢いは止まり、経済は元気がありません。方向性を見失った日本経済に対して、経済アナリストは新しい価値の創造と言ってはいるものの、その実像は描けていません。一体、その価値とは何でしょうか。そこで、眼の前の商品を見てみましょう。この商品を一味違う商品に仕立てられないか。商品の中に潜んでいる感性価値を高めるという価値創造に眼を向けてはいかがでしょう。
感性価値は五感に訴える価値で、その創造や開発は日本人にとても向いています。一因として、日本の生活文化がその優れた土壌を培っているからで、昼食時に「昨日は中華、一昨日はイタリアンだったから、今日は和食にするか」という贅沢な選択肢に迷うことが日常茶飯事になっている国は少ないと思います。
そこで、官能開発の出番になります。昭和型の官能検査の判定能力を平成型にアレンジした官能開発、つまりSDP(Sensory Design Program)の活用です。感性価値を客観的に記述し、衆知を集めた議論を可能にする視覚化を行い、感性価値を創造し、商品に実装していく。これがSDPの官能開発です。
感性価値は一般に投入原価対比が大きく、非常に効率的です。しかも、考え方を少し変えれば現在の技術の延長で導入可能で、新しい設備の導入や人材の登用も不要です。
SDPによる感性価値の開発は、現在、またこれからの日本の生きる大きな道のひとつと考えています。

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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。
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◆プロの知恵によるカウンセリング、コンサルティングを受けてみませんか
 ・SDP研究所の官能開発のカウセリングを導入してみてください。
 ・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを30年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第8号(2013/03/01) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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