1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:学び合いの場

「シニア大人市場とマーケティング、商品開発」メモ

満席 立ち見が出る盛況でした

【まつもとかつひで(日本オリエンテーション主宰)メモ】
1.過去の団塊ブームは何だったのか?
 マスコミ、代理店に翻弄されない、シニア・大人市場を自分たちで考える。
 シニアという言葉に違和感がある。シニアでない言葉が出来ないか。私は、「人生の大人」がいいと思っています。→カッコいい大人になろうよ、提案がいいな。
2.フィジカル(体)とメンタル(意識)のギャップが出てくる。
 老眼になってびっくり。トイレで新聞を読んでいて文字がかすれてショックを受けた経験があります。このギャップをどう調整するかチャンスでは。
3.生活を楽しむ大人たち
 女性は、グループでマージャン、ダンスを楽しむ。ファションも楽しむ。今日の生活を楽しむ感覚。それに対して男性のスタイルが見えない。趣味ライフを楽しむ男性は?
4.複眼市場として捉えるのも面白いのでは
 大人両親と子供(親父のビールを子供が飲む、イトーヨーカ堂のおやじのシャツを子供が、子供のシャツを親父が、の広告)
 夫婦の共に健康、祖父母と孫との交流 「共に」もキーワードでは
 男性の料理教室も「共家事生活」。
5.大人市場は多様
 自分は年寄りで、これからどう生きていくかわからないという、ネガティブなアイデンティティ―を持っている人か、今までの経験を生かしてこれからも社会に貢献したい、ポジティブなアイデンティティーを持っているかによって分かれる。ネガティブをポジティブへの提案
6.過去歴の分析
 昔が懐かしく感じられる世代。過去の食経験、生活経験を現代風に仕立てなおすことが新商品開発の切り口になる。

【高橋正二郎(日本オリエンテーション客員研究員)メモ】
1.いかりや長介がカッコイイといわれる所以は、長身で哲学者的な容貌、リーダーシップのある人柄にもあるが、なによりベース奏者としての芸がモノを言っていると思われる。とはいえ、カッコイイ・オジサン像を一般化するのは極めて難しい。
2.最近のオバチャン、オジチャンは元気で、一昔前の年寄りとはイメージが違う。
好感が持てる第一の条件は元気なこと。元気さの感じられないアクティブ・シニアなどいう呼称はシニアの当事者でさえしっくりこない。反面、今の若者は元気がない。酔っ払ったイキオイで電柱に登ったりする若者を見かけない。
3.今のシニアは元気そうでいるが、フィジカル面とメンタル面での乖離があるようだ。
40代頃から健康診断などでフィジカル面の衰えを知らされ、否応なしに意識する。逆に、メンタル面には成熟が感じられず、幼稚な50代というような乖離に苛まされる。フィジカル面の補強の商品でも、喜びやご褒美に結びつけるメンタル面への訴求にしたい。例えば「膝の痛み」は単にフィジカルな痛みの解消を訴えるのでなく、「ダンスの楽しめる膝」など、楽しさを全面に出したメンタル面に関わる効用を訴えたい。→ポジティブ・ライフの提案
食べる力、眠る力という身体的基礎能力が少しずつ落ちているが、食欲や食の嗜好傾向などは維持されるので、食べ物は味やリッチ感はそのままで量を若干減らして味わいたい。欲しいのは「爆睡力」。眠り落ちる力、眠り続ける力で、爆睡力サプリなんかがあったら嬉しい。
4.大型スーパーを中心とした流通の現状と今後はシニアにとって大問題である。
クルマの利用が前提なので、後期高齢者を中心とした免許返上が大量発生したら、スーパーの経営どころか暮らしすら立ち行かない。経営の成り立たないスーパーは撤退することになり、ウォルマートのような焼畑商業になる。少量、適量の商品化などニーズの変化に対応をしているが、場当たり的でメーカーに対する優越的地位の乱用と思われるフシもあり、真の対応とは言い難い。
5.「リッチandヘルシー」という考え方からの考察
ヘルシーという目標へはリッチ感を薄めるのではなく、量の削減で達成したい。生活の各要素を【質×量=一定】としたとき、量が減った分だけ質への転換がはかれるか。家族構成が夫婦だけのエンプティ・ネストになっても、消費性向は質の向上へ向かう筈だ。→エンプティ・ネストになると張り合いを失いネガティブ思考になると言われている。メーカー側としては、プラットフォームとモジュールの組合せという考え方で対応していくのだろう。
6.シニア層へのアプローチが貧弱で、手法を始めアプローチに関する研究開発が急務。
60歳以上のシニア層は3800万人もいるのに、1500万人足らずの20代よりも十把一絡げの画一的な扱いをしている。→北欧のスェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの人口は4か国合わせても2500万人。3800万人という数字の大きさの再認識が必要。巷の調査結果を見ても、プリコードされた選択肢の複数回答式のデータが多く、皮相的な姿を描くに止まっている。本音に迫った実像はこれからに期待したい。そのような調査の中で、購買機会、冷蔵庫の中味、気をつけて食べるモノ、として定番で上がってくるのが乳製品で、牛乳、ヨーグルトはシニアの必須アイテムになっている。
負担になる支出として保険、医療、クルマの維持、住まいや家電などあげられ、一方、充実したい支出としては「旅行」が定番で、以下、ウォーキング、軽い運動などの品行方正な項目が並んでいる。これが本音とは到底思えない。止めちゃえば楽になるのにという、妙な支出もある筈だ。シニア層は多くの購買機会を体験してきた百戦錬磨の人たちである。松本さんが常々言っている「満腹の王様に何を召し上がっていただくか」という気持ちで取り組む必要がある。
7.その他、気になったキーワード
◆夫婦「共に」 ◆なつかしくて革新的:(塩糀→伝統的地域食材の全国区化) ◆成熟した暮らし方 ◆「久しぶり」の消滅(ツイッターやフェイスブックの普及)

【参加者のコメント】
<Aさん>
「シニア」がビッグマーケットとわかっていても、そこへ向けたズバリのサービスと商品を提供する事は簡単なことではありません。「シニア」がマジョリティーになっていくとして、そうなればますます多極化するのでしょう。現役「シニア」の方が何に興味をもって、どんな暮らしをしたいのか、というところは垣間見れた気がします。

<Bさん>
一言で「シニア」と言っても、一区切りにはできない多様な個性があることを改めて再認識しました。
「メンタルの元気と衰えを感じるフィジカル」のギャップにヒントがあると思いました。また全く別の話ですが、私の中で印象に残ったのが、高橋さんがおっしゃっていた「後ろめたさ」がシニアの消費を後押しするという言葉です。
60代と言えば、時間的な余裕 あるいは子供が巣立った生活の変化等で
・ゆったり心を豊かにする商品
・ダウンサイズ 少量で質のいいもの
・コンパクトだが快適
などがこれまで考えたいたことですが、それとは逆説で「後ろめたさ」が後押しするとは新たな発見です。
私の解釈としては、現在の60代はまさにバブル時代を現役真っ只中で謳歌した世代。その思い出が懐かしく感じるのではないか。確かに、六本木でシニア向けの「ディスコ」が流行っているとも聞いています。
商品アウトプットとしては、全く逆で「過度に華美な商品」「無駄に豪華な商品」というのがあるいは、バブルを彷彿させ、「後ろめたさ」のマインドを刺激するのではと思いました。

<Cさん>
シニア・大人といっても年代や男性/女性でも思考が大分違ってくると思います。
私の親がちょうど60歳程で老後の暮らし方を考えはじめました。父は昔から好きなこと(やりたいと思っていてもやれなかったこと)を楽しみたい。母は新しいことを始めたい、若い人と同じことがやりたい(いつまでも若くいたい?)というような気持ちが強いようです。男性・女性の思考の違いに注目してみることで企画のヒントが生まれるのではないかと思いました。

<Dさん>
皆さんの意見・・・非常に面白かったです。また行きます。
シニア・・・色んな見方があり、簡単にはくくれない。
やはり「食べて健康」
求められる、売れる「発酵感」・・・強制的に人為的に管理された「バイオ風」の発酵感より「微生物の活躍を見守り育てる風」の発酵感表現が売れるような気がする。「地方色を大切に」

<Eさん>
シニア層には、ライフスタイルや個々人の価値観によって、ニーズが多様化していることを会話の中から感じとれましたし、商品設計をしていく上では、ターゲット像を具体的にイメージしていきながら組み立てていく必要性があると思いました。