1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:商品開発のセオリー スパーキング

31. 商品開発・成功体質をつくる -6「柔軟性思考は効用発想から」

魅力商品は他業界から

 固定概念が、魅力商品の開発の大きな阻害要因になっています。
ドレッシングには油が入ると、固定概念を持っているドレッシングメーカーの人には、なかなかノンオイルドレッシングの発想は出てきません。
飲料メーカーの人にとっては、花王の「ヘルシア」は飲料としてはこの味では出せない、飲料の味への固定概念があります。
入浴剤メーカーの人からは、バンダイから発売された1回300円の「浴玩」の発想は出てきません。入浴剤は100円前後だという固定概念があるからです。
魅力的商品は、固定概念がない他業界、異業界から、よく生まれてきます。固定概念がないからです。

昔々の時計の話

 昔々こんな話を聞いたことがあります。
時計メーカーの企画担当者とコンサルタントの話です。

「置き時計が売れなくなった。なぜ売れなくなったのか?」
  「置き時計より正確な時計がたくさん身近にあるからですよ」
「当社の時計より正確な時計があるのですか。見てみたいですね」
「あなたは、毎日何を見て出社するのですか」
「テレビを見ていて出社します」
「ほら、あなたの企業の時計より正確な時計が有るじゃないですか」
「なるほど、テレビも時計だったのですか。NHKの時刻表示の方が当社の時計より正確ですね」

企画担当者には時計とは、こんなモノだという固定概念があるからです。
この固定概念が市場の変化の本質を見抜く力を阻害します。

メーカーの人が陥る問題点は、時計とは、時計というモノ=ハードだと思い込んでいることです。私どもの考えは、消費者はいま何時だろうかと思った時に正確な時間がわかることを望んでいるのです。テレビの時刻表示でも腹時計も正確なら時計です。

和菓子の話のちんぷんかんぷん

 私の先輩コンサルタントの経験した、笑える話です。
和菓子の組合から、和菓子が売れなくなったので相談を受け、いろいろなアイディアを提案したのですが、それは和菓子ではないと全部否定されたそうです。

コンサルタントは、「和菓子の代表は何か、洋菓子の代表は何か」と尋ねたら、
「和菓子の代表は羊羹で、洋菓子の代表はカステラです」
「羊羹を中にして、カステラでくるんだ菓子は何菓子ですか」と尋ねたら、「カステラが外から見えるので、それは洋菓子」、「反対にカステラを中にして羊羹でくるんだら、それは、和菓子だ」との返事でした。
その後コンサルタントは、「羊羹とカステラを合わせたら、なに菓子になるのか」と聞いたら、ケンケンガクガクになったそうです。

これも和菓子とはこんなモノ、洋菓子とはこんなモノという固定概念が新商品アイディアを阻害していた例です。
和菓子か、洋菓子かと考えるのではなく、消費者が求めているのは何なのか。「おもてなし菓子」なのか「くつろぎ菓子」なのか。それならどんな菓子を作ればよいのかを考えていくことが、柔軟な開発です。

柔軟思考は効用発想から

 魅力商品を開発するには、固定概念を捨て、効用発想をすることです。
効用発想とは消費者が商品に期待している「こと」は何なのか。どんな生活メリットを期待しているのか。なぜ売れているのかのWHYの発見です。
これから何回も「効用発想の」話が具体的に出てきます。大事な「発想視点」です。

日本オリエンテーション 松本勝英

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