商品開発の仕事をしていて、商品コンセプトという言葉を知らない人はいないと思います。しかし、商品コンセプトとは何ですかと聞きますと答えられる人は少数です。企業においても、貴社の商品コンセプトの定義は何ですかと聞いて、その企業独自のコンセプトの定義を明確に出来る企業もまた少数です。
よく企業で出てくる話は、アイディアの後付ですという話です。
アイディアをより魅力あるものにしていくのなら、アイディアの後付でもよいのかもしれません。またバイヤーを説得するツールですよ、という話も聞きます。説得に役立つようならそれもいいのでは。
しかし、ここで話をしたい商品コンセプトとは、魅力的商品を開発し、市場に導入するための統合された概念についてです。
商品コンセプトとは、商品を開発するに当たっての基本的な考え方を定義したものであり、コンセプトでの中心にあるのは、「生活メリット・ベネフィット」です。
「生活メリット、ベネフィット」について概念の話は前回しました。具体的な「生活メリット、ベネフィット」の開発については後で詳細に述べる予定です。
まずはテーマ商品の魅力的、それも消費者にとっての生活メリットを発見、開発することがスタートです。
次に大事な点は、商品コンセプトは、魅力的「生活メリット・ベネフィット」と「ターゲット」、「場面」との魅力的な関係の開発だということです。
魅力的「生活メリット・ベネフィット」が発見、開発されても、それを魅力だと共感してくれる人、ターゲットがいるか、そのターゲットの共感の深さ、拡がりとしてのターゲット・サイズが重要です。生活メリット、ベネフィットとターゲットとの、魅力的関係を作り出すことが重要です。
鎮痛薬に求めている「生活メリット・ベネフィット」は、よく痛み止めを使う女性のための"胃を荒らさない鎮痛薬"、痛みを早く止めたい忙しい人の"速効性鎮痛薬"、慢性的頭痛の人の"確実に痛みを除く鎮痛薬"などがあります。"長時間持続効果のある鎮痛薬"は、いままでにない「生活メリット・ベネフィット」です。しかし長時間じわじわ効いてくる感じがして、速効性を求める人には魅力になりません。また、安全性を求めている人にとっては長時間胃に作用することは心配です。魅力だと感じるターゲットがいません。これでは魅力的コンセプトにはなりません。
また、傘は"雨から身を守る"「生活メリット、ベネフィット」を持っています。しかし、雨の降らない地域では、「生活メリット、ベネフィット」になりません。場面もコンセプトにとっては重要です。場面との関係を開発することがコンセプトの開発です。
商品コンセプトは、競合商品(直接競合商品、間接競合商品)より、魅力的な「生活メリット・ベネフィット」と「ターゲット」、「場面」との関係の開発です。
生活メリット、ベネフィットが既存のものであっても、ターゲット、場面が異なると魅力的コンセプトになる可能性があります。
商品コンセプトに基づいて、どのような製品を開発するのか、トライアルのフック=キャッチフレーズの開発、ストアカバー計画、販売促進策、コミュニケーション計画などの売り方の方法が決まってきます。これらのマーケティング施策が商品コンセプトに基づいて統合されていないと成功する新商品を開発することは出来ません。
日本オリエンテーション 松本勝英
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