1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「マツモトミネラル」

マツモトミネラル第200号

配信日:2007年11月20日

第200号
『五線が見える』『体の予測とのずれに快感』『異文化取り込む日本独自の編集能力』『コピーの裏に綿密な戦略』『暗黙知の伝達』


11月17日、金沢工業大学主催の「ルネッサンスジェネレーション」情動?欲望
・操作・自由 を聞きに行って来ました。
社会現象を考えるに当たって重要で不可解な<情動>は、やはり不可解でした。
無意識レベルの情動が、論理で割り切れない世の中に関係していることはちょっと
見えてきました。刺激的で、これからのテーマです。
アメリカでは、情動を刺激するニューロマーケティングが展開されているようですが、
深層心理(パッカードナドの「隠れた説得者」など)と脳のサイエンスの融合のよう
な感じがします。恐怖、報酬をトリガーにして、いろいろなもくろみ(政治、マーケ
ティングなど)がされているような感想を持ちました。脳の支配と倫理にも興味を
もたなければ。

■『五線が見える』
★気づき
映画「楢山節考」では、農家の男がわら打ち仕事をしながら歌う唄を作曲して
俳優に教えるなどの作業をした。
唄を作ると、まず僕自身が歌って監督に聞かせる。すると監督がぽつりと言う。
「五線が見える。」
分かりますか。五線紙に「書いて」作曲した感じが残っている、ということ。
農民の仕事唄だ。いわば土から生えてきたような唄でなくてはいかん。「じゃ、
作り直します」。しばらく経って再度僕は歌った。
「うーん、まだ四線あるな…。」
今村昌平という人の洞察力の鋭さ、おそろしいほどの想念の深さ、そして頑固さ。
今村監督の仕事を巡るエピソードは、とても書きつくせない。
作曲家 池辺晋一郎 氏 読売新聞 2006.6.13
★ミネラル
こだわる前に、深い洞察、想念と頑固がなければならない。洞察、想念と頑固
がエピソードの生まれる元では。
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■『体の予測とのずれに快感』
★気づき
「ジェットコースターの快感はジェットコースターの動きと、ひとが持つ予測
感覚のずれから生まれる」。先頭車両が山を越えて下降を始めても、その直後は
コースター全体は減速中。下っているのに思ったほどには落ちていかない。先頭
の乗客はこの動きに「もどかしさ」を感じる。
最後尾は上りなのに加速する「体が経験で覚えた感覚とは違う体験」をすること
になる。
朝日新聞 2006.11.12
★ミネラル
感覚の期待、予感とずらす、そこに新感覚が生まれてくるのでは。
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■『異文化取り込む日本独自の編集能力』
★気づき
日本文化の優れた成果を見ると「主題型」でなく「方法型」ですね。枯山水の
主題は水だが、水を感じたいから水を抜くというメソッドが大胆だ。方法を深め
ることで質的な変化が起きる。
今の日本が直面する環境、平和、格差などの問題は主題型だが、このようなグロ
ーバル基準で扱うと日本の特色は出にくい。
四季の変化があり、湿度が高く、かそけきものが生じやすい日本は、分けられな
い領域を持っていて、西洋的な二分法で確立できないものがいっぱいある。
日本文化史の決定的な発明は、漢字から仮名文字を作ったこと。「アワセ、キソ
イ、ソロエ」という日本的編集方法を見直す必要がある。
編集工学者 松岡正剛 氏 日経新聞 2007.3.7
★ミネラル
「方法型」を日本の文化から学び、マーケティングに生かしていくとおもしろ
い。謙虚の魅力も日本的「方法」では。
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■『コピーの裏に綿密な戦略』
★気づき
レオンがあれだけ売れたのは、本音主義だったから。「小金持ちヨコシマオヤ
ジ」の本音とは「もてたい」。ただ、本音をうまくオブラートに包むのにウィッ
トが必要で、それが「チョイ不良オヤジ」。生まれた言葉はセンスではなく、
「戦略」、言葉の裏には綿密な戦略があるんです。
日本人って「ちょい」好き。群れから飛び出す勇気はないけど、少しだけなら
逸脱できる。まじめだからファッションも一生懸命勉強する。それでは差別化
できないから「ちょっとだけ危なそうな感じ」を醸し出すといいですよ、と。
そこまで考えて初めて「チョイ不良」が出てくる。
KI&カンパニー 岸田一郎社長 朝日新聞 2007.3.20
★ミネラル
レオンは、ホンネの日本的編集だったのだ。
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■『暗黙知の伝達』
★気づき 
組織では、形式知のみの伝達・共有では不十分であり、他人の暗黙知を学び
自分のものとし、それに独自の要素を加えていかねばならない。
野球を例にとる。長嶋は「来た球をパっと打つ」と、感覚的に表現する。野村は
「自然体で構え、グリップの位置はこう、体重移動は…」と具体的理論的に説明
する。
阪神においては、野村の理詰めと実践というヤクルト時代の方法は機能しなかっ
た。チームの変革には「厳父のような存在感にある監督」が必要と感じ、星野を
推薦した。星野は短い象徴的言葉と独特の雰囲気で選手に自分の考えを浸
透させた。
彼らの指導法は様々。しかし暗黙知を伝達しようと、自らの「生き方」や経験を
内面化し、言葉だけではなく全人格的なものとして表現するところは共通する。
一橋大学 野中郁次郎 名誉教授 朝日新聞 2007.3.2
★ミネラル
暗黙知の共有化は言葉だけでは伝えられない。これからは生き様をさらさなけ
れば。オシム監督の暗黙知を元気になってみせてほしいと切望しています。

               日本オリエンテーション 主宰 松本勝英
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★マイカレンダー 11月6日(火)?11月19日(月)
6日(火)日本の大手食品メーカーの研究所2社訪問、意見交換。研究環境の良
さとスピード化に対応する施設はなかなか感心でした。話も研究というハードで
はなく、変化を捉えるマーケティング視点の重要さなどが中心でした。夜は研究
者と焼き肉。ごちそうになりました。
7日(水)モーターショーへ。感想をいくつか。車の楽しみ提案があまり魅力的
ではなかった。コンセプトカーの環境デザインは各社とも似ていて、ヒューマン
&ナチュラル。違ったアプローチがないのか? 軽自動車メーカーの小型車が魅
力的になっている。やはりジャガー、メルセデスのセダンは伝統のすごさを感じ
る。

8日(木)9日(金)「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナー。今回は
24人と少数なので、企業の人たちの顔が見えていろいろなキャッチボールができ
ています。しかしちょっと寂しい参加人数です。
12日(月)社内打ち合わせと社内仕事。

13日(火)コンサルティング。ターゲットとエリアを絞り込んだマーケティン
グ展開、いわばゲリラ的なマーケティングプランづくり。夜は、以前コンサルテ
ィングをしていた企業の方が来社。順調に推移しているとの話。快食。
14日(水)コンサルティング。最後の目=魂を入れる。事業部としての戦略の
共有化。

15日(木)コンサルティング打ち合わせ。評価方式の革新について。午後、コ
ンサルティング。垂直立ち上げと継続的浸透のミックスを考えた導入計画を考え
る。
16日(金)コンサルティング打ち合わせ。変化を基にした仮説づくりと開発プ
ロセスの革新。午後、30年ぶりに整髪に。かみさんに30年髪のカットをして
もらっていて、初めて美容院でプロ中のプロにカットしてもらい、新鮮。夕方、
HP新規作成の打ち合わせ。
17日(土)金沢工業大学主催の「ルネッサンスジェネレーション」。
情動?欲望・操作・自由 へ。

土日一人で映画を見に行く
「タロットカード殺人事件」ウディ・アレン監督
敏腕記者の幽霊、ウディ・アレン演じる偽父親、偽富豪、イギリス上流階級に対
するエスプリの利いた、大人のエンターテイメント映画です。リラックス・リフ
レッシュにどうぞ。


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 ■□■ 「MATSUMOTO・MINERAL」
 ■■■ 第200号 (2007/11/20) (c) 1999 Japan Orientation
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