1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

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考えるヒント:メルマガ「マツモトミネラル」

マツモトミネラル第238号

配信日:2009年06月16日

『水遊び』『衰えぬファンタジーの魅力』『認知のカギ握る「チャンク」』『異端確率論、ネットで脚光』『気遣うこころ』

6月16日(火)
亡くなられた脳科学者 松本元(元理化学研究所)さんからお聞きした話です。
事故で脳挫傷を負い、回復の見通しのない子供の親に、子供の体に触り、あなた
は私たちにとって大事な子供だと語り続けなさい、回復するかもしれない。
結果、子供は自転車に乗れるまで回復した。
全盲の辻井伸行さんのニュースを見たとき、ふと、松本さんの話が浮かびました。
すべての人間は偉大な能力を持っているのだ。


■『水遊び』
★気づき
 ゴリラはよく水遊びをする。私はふと、これが遊びの原点だということに気が
ついた。捕まえられないもの、形にならないものを追いかける行為にこそ、目的
を持たない遊びの本質がある。そこに言いようのない楽しさを見出す能力は、人
間以外の動物にもあるのだ。
 科学は世界を正確に読む技術を人々にもたらした。しかし、人間はあえて不確
かなものを作り出して一喜一憂することに大きな価値を置いている。それは目的
や効率では評価できない遊びの精神である。その二つの方向性をバランスよく保
つことが、人間社会の豊かさなのではないかと思う。
京都大学教授 山極寿一氏  日経新聞2006.8.1

★コメント
 映画を見てただ楽しむ、一人旅で無目的で気ままに遊ぶ。目的を持たない遊び
は案外難しいのでは。26日から東北一人旅に行きますが、時間もスケジュールも
決めず。無目的な旅をしてきます。
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■『衰えぬファンタジーの魅力』
★気づき
 人間は「いま、ここ」だけに生きているのではない。現実より美しい世界を創
造し、「こうありたい」という理想を持っている。だからこそ人は自らが有限で
無常な存在であることを思い、悲しみもする。空想の世界と現実を合わせ鏡のよ
うにすることで表れてくるそうした感情は、すぐれたファンタジーが呼び起こす
ものだと私は考えている。
 物語の中に現れる見たこともない風景にノスタルジーを感じたり、現実世界に
は存在しないものを美しいと思えたりできるのもファンタジーならではだろう。
人々が無意識に共有しているイメージを呼び起こすのが神話の力であり、ファン
タジーの力だ。
作家 上橋 菜穂子氏  日経新聞2007.10.24

★コメント
 雲雀が天高く上がっていくのを見て、雲雀のなわばり行動とみるのが現実的な
見方。雲雀が天の神様にお願い事をしに行っているという見方は、神話的な見方。
どちらがイメージが膨らんでいくのか。
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■『認知のカギ握る「チャンク」』
★気づき
 人間が言語を操ったり、他人の心を理解したりする高度な認知能力はどこから
生まれるのか。情報を圧縮する「チャンク」と呼ぶ働きが高度な認知で重要な役
目を担っているとみる。
「例えば『79411921868』という長い数字を覚えるにはどうしたらよいか。数字を
いくつかに区切り、794を『鳴くよ』、1192を『いい国』などと覚えれば簡単です。
このように数字や記号を意味のあるまとまりとして扱うことをチャンクと呼びます。」
「私の考えでは、ヒトの高度な認知は短期記憶にはあまり関係なく、チャンクに
起因します。音や文字を単語にまとめ、文章にする言語能力はチャンクに大きく
関わります。他人の心を推測する能力にも強く関与しているのではないか。」
「例えばこういう実験があります。太郎君は、知らないうちにお菓子を隠されて
しまいました。それを目撃していた次郎君に『太郎君はお菓子がどこにあると思
っているかな?』と尋ねるという実験。これに答えるには太郎君が知っている情
報と、実際に何が起きたかという情報を階層化して扱う必要があります。これも
チャンクの働きの一つです。」
             名古屋大学大学院情報科学研究科 川合伸幸 助教授
                           日経新聞2006.11.12

★コメント
 塊としてとらえる、関連して把握する、階層化して流れを捉える。人間のチャ
ンク力を高めると、ちょっと頭がすっきりし、風通しが良くなるのでは。
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■『異端確率論、ネットで脚光』
★気づき
 例えば、彼女が自分に好意を持っている確率はどれくらいか。とりあえず五分
五分の確立だと仮定してみる。
そして「とりあえずの推定」が正しいかどうか確かめるため証拠を集める。携帯
電話でメールを送ってみる。好意があるなら9割の確率ですぐに返事が来るだろう。
好意がないならすぐに返事がないのは3割と、これも仮定をおく。
実際に送ってみたら、すぐに返事が来た。この場合、計算の結果、好意を持たれ
ている確率は75%。メール実験で当初の推定50%が改められた。
 こうしたやり方を、トーマス・ベイズという18世紀の数学者にちなんで「ベイ
ズ推定」と呼ぶ。「とりあえず」と主観的な「事前確率」をおくのが特徴。不確
実でもよい。結果として間違っていてもよいから事前情報を積極的に利用、新た
な事実や証拠が推定をどんどん改めていく。
 ネット書店を利用すると「こんな本はいかが」と勧められる。このサービスに
はベイズ推定が利用されている。購入歴から顧客はどんな本に関心を持っている
のか、コンピューターが推定、常にデータを集め、より正確に好みを判定しよう
としている。
                            日経新聞2006.12.3

★コメント
 主観としての仮説がある、それを検証をする、そして新たな仮説をつくる、検
証し、また新たな仮説をつくる。この流れはよくやっている仕事の流れでは。
ネットで消費者との意見交換、推定していく方法は面白い。
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■『気遣うこころ』
★気づき
 茶を飲むのに、どうしてうるさい作法がいるのか......知りもせずに、勝手なこ
とをうそぶいていた。
「亭主はおいしい茶を飲んでいただくために、あれこれ気を配ります。招かれた
客も、おいしく茶をいただくために気を使います。」
作法が先にあるわけではなかった。高価な茶の道具類が、大きな顔をしているわ
けでもなかった。おいしい茶が主役なのだ。
茶をおいしく飲んでもらうために、亭主はどうすればいいのかと気を使い、こころを
尽す。が、『気』というものを見ることはできない。
茶の湯の所作は、亭主がおいしい茶をたてるために使う気を、形にしたものだった。
「指輪や腕時計などは、はずされたほうがよろしいでしょう。」
茶碗に指輪がぶつかっても、傷がつくわけではない。しかし傷つける可能性のある
品は、はずしておくのが客の心得ですと教えられた。招かれた客もおいしく茶を
いただくため気を使うというのは、こういうことなのだ。
夏の朝茶も体験させてもらった。
支度ができたことを、亭主はつくばいに流しいれる水音で報せる。客は耳を澄ませて、
合図を聞き取ろうとする。
相手を気遣う。
茶の湯の真髄は、ここにひそんでいた。
                  作家 山本一力氏  日経新聞2007.8.19

★コメント
 ホスピタリティーの本質は、相手を思う「気」では。型が重要である。形の本質を
感じ取る力が必要では。
                  日本オリエンテーション主宰 松本勝英

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