1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第13号

配信日:2013年8月1日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.13□■
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英 の共同メルマガです。

◆INDEX
1.『QDAをベースにした商品開発(その1)』大西正巳
まずは現在の官能評価と品質の設計・開発スタイルの棚卸しをお勧めします。
2.『好き嫌いの官能評価(U型官能評価について)』高橋正二郎
官能評価には、人間の感覚を用いてモノの特性を記述・評価することが思い浮かぶが、逆にモノを使って人や集団の特性を記述する可能評価もある。嗜好型官能評価もしくはU型官能評価と呼ばれる官能評価で、マーケティングでは重要な位置づけの仕事になっている。

■「QDAをベースにした商品開発(その1)」大西正巳
官能評価を商品評価の中心に、そして官能開発を商品開発の主機能に位置付けてシステム化したものがSDPです。その考え方と具体的な方法論、あるいは課題等について数回に分けて述べたいと思います。
QDAに限らず様々な官能評価が製品の品質検査や保証のために、また日常の生産活動の改善に用いられていますが、これは主に「おいしさの維持・管理」と「生産効率・コストの改善」が狙いです。
QDAそのものは既存の(製品)品質の官能特性や製品間の違いを定量的に把握する道具です。しかし、得られたフレーバー・プロファイルやその評価軸を組み合わせた二次元マップを加工し、また他の官能キーワードや品質軸を付加して編集すると新品質のイメージづくりや香味のデザインにとって有用な情報が得られます。これを使いこなしていくと「おいしさの評価」だけでなく、「おいしさの発見と発明」の戦略ステージが拓けてきます。つまり「官能評価+官能開発=おいしさ開発」であり、QDAデータに知識やセンスをまぶすと「未来の品質づくり」のためのダイナミックな武器に展開できることになります。
商品アイデアやコンセプト(ソフト)から製品(ハード)の試作・開発段階に進むにはQDAプロファイル(設計図)への転換が必須です。反対に、製品イメージから商品コンセプトへと練り上げる際にもプロファイル(イメージQDA)とその特性リスト/キーワードが物を言います。特にプロダクトアウト型の商品開発を進める場合、候補品のQDAプロファイルがコンセプト(効用・ターゲット・消費場面)の立案や競合優位性、訴求ポイント、パッケージ仕様などの検討に不可欠になると思います。QDAデータは多様なおいしさイメージを生み出す宝の山だと捉え、アウトプット志向で黒光りするほど道具も磨き続けていくと商品開発の成功確率が増していくと思います。勿論、技術開発の評価と課題の発見/設定にも大いに活用すべきです。
一方で、QDAの重要性の理解とデータ(プロファイル)の活用度が今一つというメーカーもあると思います。その背景には、専門部署や専門家の限られた仕事という誤った認識もありますが、官能評価の再現性や信頼性が低い、官能データと成分やつくりとの関係の整理不足、品質情報のマーケティング戦略への反映が不得手、のような官能評価サイドにも一因があると考えられます。まずは、自社の官能評価法や人材/スキルの現状(強み・弱み)、今までに得られた成果と問題点、システム上の不備などの診断・再評価が大切です。その上で今後の守りと攻めの官能評価のあり方と官能スキルを駆使した開発スタイルについて議論してみる価値があると思います。

■「好き嫌いの官能評価(U型官能評価について)」高橋正二郎
官能評価は人間の感覚を用いてモノの特性を測定、評価することで、よく機器測定に取って替わることができないものかという議論が起きます。決まったことを繰り返し測定し、評価することなら、可能な限り機器測定に替えた方が良いと思われます。ところが、微妙な表現が求められる特性や開発の途上で必要になる新しい特性に対しての測定や評価は、人間の感覚の活用なくしては成り立たないだろうと思われます。更に、絶対的に人間でなくてはできない測定や評価があります。人の嗜好に関する測定や評価です。カレーの辛さはどのくらいが好まれるか、スマホの本体の色はどの色がお好みか、ということで、こればかりは人間にしかできないことなのです。
冒頭の人間の感覚を用いてモノの特性を測定、評価する官能評価は分析型官能評価、もしくはT型官能評価といいます。これに対して、モノの嗜好を問う官能評価を嗜好型官能評価、もしくはU型官能評価といいます。T型官能評価は人間の感覚を使ってモノの特性を測定、評価しますが、U型官能評価はモノを使って人や集団の特性を測定、評価することになります。「Aさんのカレーの好みは甘口だが、Bさんのお気に入りは激辛」とか、「スマホの色のピンクは女子学生に好まれ、シルバーゴールドは40代の男性に好まれる」という例で、人や集団の特性がカレーの味やスマホの色で記述されたことになるわけです。
U型の官能評価はT型とは大きく異なります。最大の相違点は評価者が社内の人員ではなく、外部の一般の方から選出することにあります。選ぶ対象は誰でも良い訳ではなく、代表性の保証という制約があるため、外形的には市場調査の商品テストの形式を採ります。ターゲットに合った人に対して、実際に商品を使用していただき、その印象について回答していただく訳で、こんな人に、こんなことを尋ねたら、こんな答えが返ってきたという市場調査そのものの展開になります。
ただ、注意していただきたいのは官能評価であることで、官能評価の考え方に基づく計画であることは勿論、官能評価上の注意点や忌避事項などをしっかりと守ることが求められます。
U型官能評価は顧客の嗜好や感じ方が把握できるので、マーケティングを展開する上で極めて重要な作業になります。一方で顧客の嗜好や感じ方の把握を間違えれば、マーケティングの目標達成は不可能になり、延いては企業の経営にも重大な影響も出かねません。
次号以降、U型官能評価についての、計画、進め方、事後処理などついて具体的に述べてみたいと思います。

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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。お待ちしています。
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 ・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを30年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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