1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第18号

配信日:2014年1月6日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.18□■
あけまして、おめでとうございます。今年も官能や感性価値についてお話をさせていただきます。日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同 高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰 松本勝英の共同メルマガも、お蔭さまで足掛け3年、18号になりました。

◆INDEX
1.『香り・味わいの官能評価』大西正巳
鳥の目と虫の目で感覚を磨き、心を込め、楽しみながら日常的に利くのが一番です。

2.『お客さまとの言葉の違いのスリ合わせ』高橋正二郎
官能評価でのお客さまの言葉とメーカーの言葉には違いがあります。この差異を確認するには、同じ刺激を共有して、その感じ方を丁寧に聞くことに勝る方法はないようです。

■「香り・味わいの官能評価」大西正巳
QDAをはじめ官能評価の方法論はかなり体系化され、また香り・味わいをみる(ノージング/テイスティング)ための道具や手順もメーカー毎に標準化されていると思います。官能力は「心・技・体」、つまり問題意識/目的意識を強く持ち、適切な官能方法を習得し、体調を管理しながら官能経験を毎日積み重ねるという努力の掛け算で決まります。そして実践を通じて識別力と評価力が最も発揮できる自分流のスタイルが確立されると、官能時の雑念や外部からのノイズを受けにくくなり、評価の精度/再現性は高まってくると思います。
一般に人は飲料・食品の香味を評価する場合、基本的な流れ(先香り→中香り→後香り/先味→中味→後味)に沿って香り・味わいの総合的な印象と要素的な特徴を評価していると思います。官能評価のコツは人それぞれですが、専門的なテイスティングでもほぼ同様の流れになります。
蒸溜酒を官能評価する際、個人的にはサンプルをテイスティング・グラスに入れ、フタをしてしばらく待ち、グラスの上部(ヘッドスペース)に漂う「香りの層」を出来るだけかき乱さずにまずは無の境地でそっと利きます。その後グラスを揺らしてもう少し鼻を入れ、トップ、ミドル、ラストのノートの特徴を言葉に置き換えます。続いて一定量を口に入れ、口中香(鼻に抜けるフレーバー)と味覚の各要素、まろやかさや刺激感、収斂味、そして最後に後味/余韻を評価します。
おいしさを構成する香り・味わいをスペクトル的にとらえその調べを聴くという感じであり、品質の骨格となる主役に脇役、隠し香/隠し味を探索していきます。
定量的に香味特性を評価するには所定のQDAチャートに官能項目(評価軸)ごとの特徴の強さをインプットしていきますが、それがない場合には頭の中に用紙をイメージしてプロファイルを描きます。ある官能項目の特徴を感じにくい時は、「この香りをみるぞ」と狙いを定め、それ以外の特徴には意識的に官能にフィルターをかけて一点に集中して嗅ぐと案外見えてくることがあります。
また、甘い香り/フルーティ/熟成感のような総括的な特徴は、必要に応じてそれらをプリズムのように要素に分類し、より具体的な言葉(二次用語)に展開して見直すと特徴の違いが詳しく表せます。ウイスキーやブランデーの官能評価はアルコール度数に関係なくまずストレートで評価し、その後20%または30%アルコールに調整して再評価することが多いと思います。また割り水の一種と言えますが、サンプルに二、三滴の水を加えてトップノートの系(香り成分の平衡状態)を少し乱し、微妙な変化をみることもあります。もうひとつ付録的な香りの評価には「残り香」があり、色々と物語ってくれます。ウイスキーやブランデーのような樽熟成された蒸溜酒(特に初めてのサンプル)の場合、テイスティング・グラスに少量残してフタをせずに一晩放置し、残り香を利きます。揮発性の低い重厚な香りが勿論目立ちますが、飛散しやすい香りも意外と残っているものです。
単なる“残滓”というイメージではなく、凝縮された伸びのある香りにはその酒の生まれと育ちの歴史が表れます。おいしさの評価と発見には様々な「料理法」が有効だと思います。

■「お客さまとの言葉の違いのスリ合わせ」高橋正二郎
官能特性の表現において、モノつくり現場のメーカーの言葉とお客さまが日常使われる言葉との間にはかなりの違いがある場合があります。試作品や市販品を使ったテストでお客さまの好みや感じ方を聞くときは、解釈の必要上からモノつくり現場の言葉を使わざるをえません。このためテストの終了後、言葉のスリ合わせが必要になります。
このスリ合わせ作業のもとになったのが、パリでの調査でした。15年ほど前パリでスキンケア化粧品の使用感の嗜好調査をしたとき、日本語の官能用語を翻訳することから始まりました。翻訳の作業は6人で進めます。まず、(1)フランス人女性の日本語の翻訳者と(2)日本人女性のフランス語通訳者で、次に、(3)日本と(4)フランスの調査会社の担当者、さらに私どもの(5)女性官能検査員、最後に私どもの(6)調査責任者という構成です。また、テーブルの中央には使用感の参考になる実物を置き、実感を確かめながら進めました。実は、これより10年ほど前、香りの嗜好調査をやはりパリで実施しましたが、そのときの「青臭い」などの翻訳に難渋した経験がこのような体勢の必要性を教えてくれました。この調査の終了後、フランス語と日本語に差のあることは当然ですが、お客さまと私どもメーカーとの間でも言葉の差があり、差を詰めておく必要性を感じた次第です。
通常、言葉のスリ合わせを行うには、まず、お客さまと向き合って間に試料となる化粧品を置きます。試料は自社品を含め市販品、数品を用意します。その内の1品を肌につけてみて、まず、第一感を聞きます。その言葉を頼りに、イメージを膨らませながら官能用語を引き出していきます。言葉に詰まったら別の試料に触れて、前の試料と比較をしてもらう形で言葉を聞きます。こうして言葉を聞いていきますが、こちらから言葉を出さないで我慢することが重要です。聞きたい言葉が出てきたら、暫くはお客さまの表現に耳を傾けますが、メーカーの言葉との違いを質問して確認します。確認は必ず試料を使って、Aは近い、Bは遠い、CとDならCの方がふさわしい、というように確認します。このとき、お客さまと担当者は1対1が良いようです。担当者が多いと、お客さまは担当者の言葉に合わせてしまい、お客さまが多いと、グループインタビューの失敗例のようにお客さまの間に実態とは異なるイメージ形成ができてしまう場合があります。
スリ合わせは、お客さまと一緒に官能を確かめ合う作業です。このため、この作業に協力していただくお客さまには、(1)表現力、(2)代表性、(3)協力度の3つ条件を満たすことが必要です。このためスリ合わせは、何かの自宅使用テストがあった後に実施しました。テストの終りに近づいたころ、テスト品がまだ残っているか伺い、残っているようなら最後まで使っていただけるかお願いをします。これが(3)協力度のチェックになります。一方、テストが終了したら必要な集計を急ぎ、最後まで使うことに同意をしてくれた対象者が、(2)代表性の条件の適合を調べます。テストの回答が最頻値に属しているかのチェックをする訳です。
また、調査票の自由記述欄を読んで、(1)表現力を調べます。語彙や表現が豊かで、テニヲハなどの言葉の使用が正しいことを基準としてみました。こうして何人かの候補者に来ていただけるかお願いをして開始になります。スリ合わせに要する時間は、ひとりの方に半日近くかかってしまいます。お客さまの負担も相当ですが、担当者の負荷も予想以上に大きく、年に十人位から聞くのがやっとでした。

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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。お待ちしています。
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◆プロの知恵によるカウンセリング、コンサルティングを受けてみませんか
 ・SDP研究所の官能開発のカウセリングを導入してみてください。
 ・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを30年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第18号(2014/01/06) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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