1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第19号

配信日:2014年2月3日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.19□■
官能を使って価値を開発する【官能開発】のことをお話させていただきます。
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同 高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英の共同メルマガも、お蔭さまで足掛け3年19号になりました。

◆INDEX
1.『香り・味わいとおいしさ』大西正巳
嗜好品の評価に占める香りの重要性は増していますが、香りと味の官能的な関係や「おいしさ」に与える影響は複雑で、未知な領域も多そうです。

2.『SDPで衆知を集めた価値づくり』高橋正二郎
SDPとは、見えなかった感性価値を引っ張り出して見える形にして、衆知を集めた議論を積み重ねることにより感性価値を高めることができることといえます。

■「香り・味わいとおいしさ」大西正巳
おいしさや心地よさ、快・不快は人それぞれの主観的な受けとめ方であり、香り・味わい、食感だけでなく外観や音の響き、あるいは状況にも左右されます。
四季の微妙な変化を肌で感じ、旬の食材に出汁のうまみを活かした和食に親しんできた日本人は繊細で鋭い嗅覚・味覚を身に付けました。また新たなうまさを求める創作意欲や異文化の食材との融合感覚にも溢れ、おいしさの不易と流行/食の伝統と革新はこれからも続くと思います。日本人の鼻と舌がおいしさや個性の幅を拡充し、その成果が感覚と感性に再び磨きをかける、つまり人と香り・味わいが互いに鍛え合っている間柄だと言えます。
京都大学・伏木教授は「おいしさ」を、生理学的及び薬理学的なおいしさ、情報がリードするおいしさ、文化に合致したおいしさ、そして社会的なおいしさに分類しています。一方で、おいしさの判断や嗜好を決定づける要素として香りが重要です。香りは主に揮発性の有機化合物に由来しますが、味にはそれに加えて様々な非揮発性の有機と無機の化合物(糖、アミノ酸、蛋白/ペプチド、ビタミン、脂質、不揮発酸、ポリフェノール、ミネラルなど)の多くが関係します。「香り/匂い」が遮断された鼻づまり状態では質の判断がかなりあやふやになることから味の評価には香りが著しく影響しています。ただ、味に関与する成分が香りを包み込むことや高沸点の香り成分が味(例えば苦味)を和らげることもありますので香りと味の官能的な関係は複雑です。
香りは大脳辺縁系、視床下部、脳下垂体を経て自律神経系、内分泌(ホルモン)系、免疫系に作用し、安らぎや興奮を感じさせると言われています。「香りの十徳(志野流香道)」にも、感覚を研ぎ澄ます、心身を清浄にする、孤独感を癒す、心を和ますなど十の効用が示されており、アロマエッセンス、ハーブや樹木のような精油が心地に影響することはよく知られています。また嗜好品や食品の香気は色々な生理的、薬理的(例えば抗酸化活性)効用があり、それらの濃度やバランスによりおいしさの判断や好き嫌い/やみつきなどにも結びついてきます。例えば酒類(ウイスキー、ブランデー、ワイン、ビールなど)やお茶、コーヒーのフレーバーには安らぎ(鎮静効果)をもたらす成分が含まれています。樽熟成されたウイスキー/ブランデーと紅茶、葉巻、チョコレートに共通する甘く陶酔性のある香りは何とも言えない心地良さを秘めています。ジンやアクアヴィット、ハーブリキュールなどは草根木皮類から抽出される成分の作用を期待する薬用酒として飲まれていたと思いますが、現在ではその抽出香味とベースの酒の香味がマッチしたおいしさが本質的な価値になりました。鰹節にも「うま味」のみならず安らぎを与える香りが数多く含まれていますが、日本人のDNAに刻み込まれたホッとするおいしさを担う重要な要素だと思えます。ただ、香りは脳レベルで生理的に反応していても自覚していないことがあるようで香りと人の感覚との関係も奥深そうです。香りの機能を科学的に明確にしていくのは大切なことですが、個人的には余り理詰めで効用を追い求めるよりも何か“ホンワカ”した感じで酒類・食品の香り・味わいを楽しみたい、おいしさを散策したいと思います。

■「SDPで衆知を集めた価値づくり」高橋正二郎
おいしい味、素敵な香り、気持ちの良い感触などの感性価値は、お客さまは自分の感覚で感じて好き嫌いの評価ができ、商品の価値の中ではわかりやすい価値であることがわかります。ところが、多くのメーカーではこれらの感性価値は逆に扱いにくい存在になっています。
たとえば、ある評判の良かった感性価値を別のアイテムに展開しようと思っても、なかなか展開しきれないことがあります。また、アイテム展開ではなく、感性価値をそのままパワーアップさせようとしても方向性が維持できず上手くいかないことがあります。さらにはOEM先の変更や自社生産でも工場が変わった時など、感性価値の全く同じ再現でも思わぬ苦戦を強いられることがあります。
このようにメーカーにおける感性価値は、再現、強化、展開などでも扱いには手を焼いているようで、感性価値の創造や設計になればなおさらのことと思います。それは、まず、感性価値の記述が不十分なことがあげられ、次に、記述された感性価値が議論のできるツールの形に整っていないからです。
感性価値が客観的な記述になっていないことから、伝えようにも正確に伝わらないことが多いのが現状です。このような状態の打破には定量化が必須であり、客観性、再現性、実証性の伴った定量化を推し進めなくてはなりません。このようにして得られた定量化は、グラフに表示することにより自動的に視覚化されます。視覚化されることにより議論がしやすくなり、議論のできる土壌があれば、社内の衆知を集めた議論が可能になります。こうして多くの視点からの議論が可能になり、感性価値を高めていくことができます。
このように社内の衆知を集めた議論ができるツールをつくり、そのツールを有効に活用することによって感性価値を高めていく工程全体が、SDP(Sensory Design Program:感性価値創造設計プログラム)に他なりません。

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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。お待ちしています。
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◆プロの知恵によるカウンセリング、コンサルティングを受けてみませんか
 ・SDP研究所の官能開発のカウセリングを導入してみてください。
 ・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを30年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第19号(2014/02/03) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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