1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「マツモトミネラル」

マツモトミネラル第130号

配信日:2005年02月15日

第130号
『神話にかえろう』『スーパーカブの開発ターゲット』『口コミ』『「かわいい」に新たな価値観』『速度の変化』


★楽しい風邪
2月10日に風邪を引いてしまいました。10日から13日まで4日間休養です。
5年前にひいた風邪が、今でも喉に影響を残し、大変しんどい思いを
したので早めの休養でした。外には一歩も出ないで、早稲田とトヨタ
のラグビーを見たり、本を眺めたり、ごろごろしていたり。楽しい風邪
ひきでした。風邪をひいたなと思ったら早く静養をしましょう。
楽しいですよ。

★読書体力の悩み
このごろの悩みは、読書体力の低下です。
根気がなくなってきて、読み出して30分位すると眠気が来ます。座って
読んでいるからかと、立って読む。眠気はなくなるのですが、集中出来
ない。トイレの中で読むこともありますが、30分ぐらいで足が痛くなり、
集中力がなくなりダウン。

先輩のコンサルタントは、本を買うことは買うのだがなかなか読めなく、
どんどん溜まっていってしまうと悩んでいました。「新聞を読むスピー
ドが速くなると老化ですよね。」という話を聞いたことがあります。
表面だけ読んでいるので、すーっとなぞっている読み方になっているの
では。わかるわかる。これらが読書体力の低下です。

読書体力回復のために、眼鏡を買いました。普通は遠近両用眼鏡を使っ
ていますが、新聞、文庫のルビが読めなくなってイライラしてしまうの
で、眼科医に相談したら、読書用の近眼の眼鏡を処方してもらい、クリ
アー。

また、事務所の人に「これ読んだら次に読む?」と聞いてみて、「ぜひ
読みたい」と言ってくれる機会をつくる。早く読まなければというスト
レッチをかけることになります。
3冊並行読みも、気分転換をしながら読めていい方法だと思い、実行して
います。

2ヶ月に一度、読んだ本のコメントを、マツモト・ミネラルに掲載する
ことも、読む意欲造りになりそうです。今回からスタート。よろしくお
願いします。みなさんをだしに使って申し訳ありません。
2005年は、読書体力造りにチャレンジ。高齢者の筋肉トレーニングと同
じですね。

★読書マイ・カレンダー
今年の1月から読んでいる本は、「場と共創」「空海の風景」「市場戦
略論」「ポストモダンマーケティング」「レクサスとオリーブの木」
「眞説光クラブ事件」の6冊です。
一気に読んだ本と格闘している本があります。

「レクサスとオリーブの木」上 トーマス・フリードマン(草思社)
グローバリゼーションを、政治、文化、国家安全保障、市場、インター
ネットから衛星通信に至るまでの技術の進歩、環境問題の6次元で読み
解く。グローバリズムを理解しているのは、ヘッジファンドの敏腕マネ
ージャー。

今日を支配するグローバル化という国際システムは、レクサスという近
代路線と、イスラエル、パレスチナなどのオリーブの木の所有権を巡っ
て戦いをしている世界が(アイデンティティー)重なり合っている。
近代化とアイデンティティの関係を読み解くことが理解につながってい
くのでは。簡単な逸話を積み重ねていくことが重要。
グローバリズムを理解するのにおもしろい本とチャレンジ中。

「ポストモダンマーケティング」スティーブン・ブラウン(ダイヤモンド社) 
「顧客志向を捨ててしまえ!」をキャッチに、コトラーなどの顧客志向
マーケティング・アンチの書である。
「異常な豊富さ」が、私たちの時代を定義する現在、不足が不足してい
る、希なことが希なのだと述べています。

ポスト・モダン・マーケティングは5つの主要原則「TEASE」。トリック
のTrickery、限定のExclusivity、増幅Amplification、秘密のSecrecy、
エンターテイメントのEntertaiment。これでもかと「TEASE」について
語っています。しつこく語っています。ちょっとうんざりする方もいる
と思います。

じらして喜ばせる6つのモデル。
1. 顧客を無視することがその欲望を増大させる
2. 顧客を否定することがその決意を強固にさせる
3. 顧客を拒むことがその欲望を増大させる
4. 顧客の欲望の成就を引き延ばすことことが顧客の心の動揺につながる
5. 商品・サービスを長い間待たせた後に届けることがロイヤルティを促
進する。
6. 商品・サービスの提供を停止することが心の動揺を引き起こす
などの、拒否マーケティングがベースになっている。
新鮮なように見えるけれど、新鮮ではない。迷える時代の、迷えるマー
ケティングの書では。

私の個人的メモ;求心力のマーケティング。少量満足型商品の開発。中高
年用ケータイもただ簡単ではなく、やっているうちに楽しく、やみつきに
なるケータイ。骨董品を買うような、楽しみとリスクのある非企画非マス
型商品。ストレートに、率直に、素朴に、ハードにコミュニケーションを。
カリスマ商品づくりの12のステップはおもしろい(P.133)。芸術・ショー
ビジネスに学ぶ。マーケティングをマーケティングする、広告の広告化、
何を増幅器にするか。本能的欲望に火をつける。旭川動物園から学ぶ(行
ってみなければ)。どんなに新しいモデルに変身しても、そこには同じ変
わらないミュータント(突然変異)のマドンナがいます。PRの天才。情報
価値の創造。いろいろなキーワードを得ました。綾小路きみまろ、波田陽
区は、ポスト・モダン・マーケッターなのかもしれない。
一つのマーケティングでは。

「市場戦略論」 フィリップ・コトラー(ダイヤモンド社)
コトラーの本を読んだのは、何年前か忘れてしまうほど前のことになりま
す。マーケティングの話をすると、(まだ)コトラーの話が出てくるのに
違和感を感じていました。やはりおもしろくないですね。ワクワクしませ
ん。スタティック・マーケティングですね。
第2章まで読んで、その後はチャレンジする意欲なし。中止。

第1章 「マーケティング思考と販売思考」。「需要喚起」「需要管理」
「システム管理」エキスパート、「マーケティング効果の監査表」
第2章 「撤退のマーケティング戦略」。撤退プログラム「評価基準の設
定」「業績目標を伝える」「計画の準備を促す」「判断のタイミングを定
める」チェック項目;売上高、市場シェア、粗利益、間接費負担率など。
チェックリストではダイナミックな市場は捉えられないのでは。

「場と共創」清水博、久米是志、三輪敬之、三宅美博(NTT出版)
第1章 「共創と場所」清水博
前著「生命を捉え直す」(中公新書)「生命知としての場の論理」(中公
新書)の2冊で、生命としての知について少しは理解しているつもりでし
たが、また霧の中に入ってしまいました。

日本人の創造性の特徴として、自他「非」分離的方法が重要。 日本人は、
コンテキストが非常に高い役割を果たすコミュニケーションを行っている。
コンテキストの高いコミュニケーションを行うことによる、情緒性の高さ
によって論理性の低さを補っている。身体性の希薄化 身体性を入れたコ
ミュニケーションの革命が必要。一般的に身体性を関与させながら、共創
的コミュニケーションを行うには「共創の舞台」としての「場」が必要に
なる。
まだまだ読み込めません。

第2章 「共創と自他非分離心」久米是志
ホンダにおける「創出」の経験と、仏教における心のあり方のシンクロで
大変興味を持って読み始めましたが、難しい。企業は多様な背景を持った
人によって社会的に生かされている。絶対多様性としての人間。生命の2
重存在性、個と場の共創など。格闘中。

「眞説光クラブ事件」保坂正康(角川書店)。
私が小学生の時に父親から聞いて記憶に残っていた、光クラブ事件。山崎
晃嗣(あきつぐ)のノンフィクションです。
昭和24年東大法学部の学生が高利貸しになり、返済不能で自殺する事件を
取り上げたもので、三島由紀夫が「青の時代」で主人公として描いてもい
ます。
当時は、東大性の高利貸しの自殺として取り上げられ、法学部の秀才、女
性遍歴、暴力、自殺などが話題になっていましたが、その深層は、学徒出
陣世代の軍、国家に対する、軽蔑を刻印することではなかったか。

戦後、昭和の時代、個人の深い悩み、闇を見た感じがします。山崎晃嗣の
自殺と、三島由紀夫の自決の時が、同じ11月25日なのは偶然なのか、必然
なのか、何か闇を感じます。
ライブドアの堀江さんは資本主義の闇をどのように感じているのかな。
一気読み。

「空海の風景 上」司馬遼太郎(中公文庫)
宗教家の考え方、心を読んでみたくて読み始めました。まだ、密教のおも
しろさまでいっていません。

★マイカレンダーはお休みです。   
              日本オリエンテーション 主宰 松本勝英

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■『神話にかえろう』
★解  説
  古代人は神話を反復しようとし、現代人は歴史を創造しようとする。
 歴史を創造しようとするその行為は、結果的に不幸の羅列以外の何物
 ももたらさなかった。
 児童の詩が人の心を洗うのは、そこに永遠の神話が潜んでいるからな
 のだ。
 反復する生命の現象だけが、くっきり浮かび上がってくる。永遠回帰
 の神話と呼べるもの。
 人間は情報を伝えながら自己を語り、自己を語りながら神話を語る存
 在なのだ。にもかかわらず神話は、現代の表舞台から姿を消している。
 エリアーデンは神話の時代から、歴史の時代への移行に不幸をみた。
 単純化して言えば、多神教の時代から一神教の時代への移行を不幸で
 あるとみなしたのだ。
               三浦雅士 読売新聞 2002.7.29?7.30

★ミネラル
  ひばりが上空に高く昇ったとき、自分の縄張り確保の手段と見るか、
 天の神様にお願いごとにいったのだ、との見方。神話的見方は後者の
 見方では。神話をどう復活させるか、だいじなことでは。
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■『スーパーカブの開発ターゲット』
★解  説
  「働く人の足に徹したバイクを」
 本田氏の開発の原点は「ソバ屋の出前のおにいチャンが、片手で運転
 できるバイク」。このため、アクセルをふかせば、クラッチがつなが
 る仕組みにし、左側のハンドルからクラッチレバーをなくした。また、
 軽くて丈夫なポリエチレンを多用し、足元には泥のはねや風を防ぐ
 「レッグシールド」と呼ばれるカバーをつけた。
 その形は、本田氏がぬかるみを走り、泥のはね具合を自分で調べて設
 計した。

★ミネラル
  現場主義の原点では。書を捨てて街にでよう。現場が気づきの原点
 です。そして創造の原点です。
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■『口コミ』
★解  説
 よいストーリーを作る
 ・「スーパー・マリオ3」の予告。希少性と神秘性とじらし。
 ・映画のメイキング番組の製作「メイキンゴ・オブ・スターウオーズ」
 「メイキング・オブ・ET」裏話、テクニック、シーンについてを知
 りたいと同時に、他の人と話したくなる。
 ・馬と馬主に映画の無料招待の小さな広告。
 ・ヒチコックの死体の人形をテムズ川に沈めてバズを作る。
 ・ヒーローを作る。ブランドと人。例えば日産のゴーン氏ように。
 「タイタニック」のレオナルド・デカプリオ。アイアコッカ、ビルゲイ
 ツ、ソニーの出井氏、などなど。
 ・イベントでどのようにバズを作り出すのか。ジープオーナーだけの
 週末のオフロード走行。
 ・「サターン・ホームカミング」
 ・BMWのトラクション安定性プレゼン
     「クチコミはこうしてつくられる」エマニュエル・ローゼン
                   (日本経済新聞社)P.208?

★ミネラル
  「バズ」とはさまざまな人の間で交わせれたコメントの集大成。
 「近所の人々の間で交わされる『新しい』人や場所や出来事について
 の、伝染性のおしゃべり」。
 この情報も「バズ」です。
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■『「かわいい」に新たな価値観』
★解  説
  「かわいいおばあちゃん」の意味は、「笑顔で人生を楽しんでいる」
 「やさしく、親しく話してくれる」「考え方が若くて前向き」などと
 捉えている。「純粋な愛情や、やさしさなどに触れたときの率直な思
 いを『かわいい』と表現している。」
           広島大学講師 小原一馬 読売新聞 2002.7.26

★ミネラル
  新しい「かわいい」という概念では。「かわいい」お年寄りに新し
 い提案をしてみませんか。
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■『速度の変化』
★解  説
  現代は「平らなスクリーンの時代」。
 それは過去への関心が薄れ、現在に関する薄い関心だけが過剰になっ
 ている時代、いわば歴史感覚の平面化が進んでいるような気がする。
 産業革命が進んだ19世紀は、いまとは逆に、歴史の深みや重みを人々
 が強く意識した時代だった。人々の視線は、いまが歴史の中の、どん
 な時代かが問題にされた。こうした関心は20世紀の半ばまで続いてい
 た。
 19世紀に人は早く流れ去る時間に対して不安や恐怖感を持っていた。
 ところが20世紀になると早く流れる時間に対する不安が消えた。進歩
 の哲学、消費が善だというコマーシャル文明の台頭が重なる。
 歴史への関心が薄れ、「歴史」に対して「記憶」という言葉が盛んに
 使われ、インパクトを持つようになってきた。
 歴史感覚が平面化することによって、歴史の遺産を次の世代に伝える
 ことが難しくなる。過去の歴史の体験を軽視することになる。歴史を
 知らない社会は知的に貧しい社会になりかねない。素岸も新しくはな
 いのに、たまたま目の前にある現象が新しいことだと勘違いする無邪
 気な真理が生まれてしまう。過去の体験や知識を正しく受け継いでい
 ればさけられるのに、それを知らないために社会全体が幼稚な錯覚に
 とらわれる。フランスでも都市近郊では伝統的な風景に関心を持たな
 い世代が増えている。
 しかし一方では、地方を中心に、自分たちの生まれた知の景観に強い
 愛着を持つ傾向も芽生え、アイデンティティの一部として風景を守ろ
 うという考えがある。人々の生活感や身体感覚は時代とともに変化し
 ていくが、こうした感覚の変化は、国や民族だけでなく地域や階層に
 よっても大きく違う。
 グローバル化は、そうした感覚の差異を自分たちのよりどころとして
 強く意識する機会を与える。感覚的問題は人間の文明や文化のあり方
 と結びついている。感覚の差異を無視したグロ?バル化は、世界の混
 乱を引き起こしている。
      アラン・コルバン「感性の歴史家」朝日新聞 2003.11.11


★ミネラル
  歴史の重要性、スピードそしてグローバル化に対する警告です。歴
 史の積み重ねが、生きる知恵となる環境にしていかないと大きな危機
 が来るような感じがします。歴史を学ぶ機会をもっともっと作らなけ
 れば。


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 ■□■ 「MATSUMOTO・MINERAL」
 ■■■ 第130号 (2005/2/15) (c) 1999 Japan Orientation
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