配信日:2008年03月18日
第208号
経済・市場の大激動化、次にどんな時代がくるのでしょうか。
新しい時代の変化の芽のにおいを感じたい。
■『「分かりにくさ」は悪なのか』
★気づき
芸術も思想も政治も、ひたすら分かりやすさが求められる時代。
映像作品の伝えていることが以前に比べ平板になった。俳優の演技一つを取っても、そこには本来、生の身体が抱える矛盾や含みがあり、それを見ることが映像を見る喜びだったはず。
ところが最近の映画では、言葉も表情もしぐさもある目的に沿わされている。
人間にはこういうこともあるという広さ、深さに向かわず、人間を単純化、パーツ化し、物語の要素に置き換えていく。映像が、分かりやすさの証拠に落ちぶれている。
僕らの小さい頃は、人生は分からないという事実を大人たちが見せてくれた。
ところが近代社会では、共同体が壊れ、バーチャル化が進んだ。生の実相から離れるほど、社会は機能を求める。機能社会は0か1かという思想を持つ。分かる、分からないに二分した方が心が落ち着くのだ。
そもそも感覚世界は分からないもの。芸術とは分からなさに向かい合うもの。
人間がそんな簡単に分かってたまるか、そんな簡単に時代を切り取れるかと。
映画監督 小栗康平氏 日経新聞2008.2.27
★コメント
わかるために考えるという力が退化している感じがします。また、わからないけれどわかりたいという事柄も少なくなり、ステレオタイプ的な現象が浮遊しています。人間の営みは矛盾し面白いのでは。わからないことが大切です。
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■『生き物感覚を大切に』
★気づき
「やはり山国で育った小林一茶の心性が生き物感覚でした。40代の終わりにこんな句を作っている。『花げしのふはつくような前歯かな』。歯がだめになり、けしの花がふわふわするようだという句。命に直結する、命丸出しの感覚です。
自由律の種田山頭火もそう。『春の山からころころ石ころ』、『もりもり盛りあがる雲へ歩む』などは、理屈のない命そのものの句です」
60年安保のころ戦後は終わったといわれ、こんちきしょうと思った。それで裸で生きる漂白の俳人に目を向け、さらに一茶の生き物感覚に出会った。
「生も死も流れなんです。生まれてくるのは偶然で、何の理由もない。死もまた偶然だ。生きるも死ぬも区切りじゃない。それが実感として自分の中で今熟しています。そう思うと、さびしくないんだ」
俳人 金子兜太氏 日経新聞2008.2.21
★コメント
数か月前に藤沢周平著、小林一茶の伝記を読みました。生き方の生々しさの中に日常の心を読み取る鋭さに共感しました。今、岩波文庫の「一茶俳句集」を読み始めているところです。
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■『遺伝子で食品を選ぶ』
★気づき
1人ひとりの遺伝子を調べ、その人の体質に合う食材を選ぶ時代が、まもなくやってくる。栄養素を代謝・吸収する酵素の働き方の違いなどがわかるので、食
材や料理の量などをコントロールできるようになる。高血圧や脳梗塞などの病気にかかるリスクを減らしたり、健康維持に役立つと期待されている。自分にぴっ
たりの料理を出してくれるレストランが登場する日も遠くなさそうだ。
体内のエネルギー代謝や脂肪の代謝に関する酵素などに個人差がある。米遺伝子検査サービス大手、ジェネレックスの日本支社では、要素の代謝肥満に関係する25種類の遺伝子を調べ、その人に不足しがちな食品などを知らせるサービスを開発中。
日経新聞2006.3.5
★コメント
遺伝子研究が急速に進んでいる。「ジュラシックパーク」を書いたマイケル・クライトンが「NEXT」の中で遺伝子研究のもたらす課題を書いています。
1.遺伝子特許の取得をやめさせる。2.ヒト組織の利用について、明確なガイドラインを定めよ。3.遺伝子診断のデータ公開を義務付ける法案を通過させよ。4.研究の規制をやめよ。5.大学の営利事業化の促進としてのバイ=ドール法を廃止せよ。
一部の人のための遺伝子工学であってはならないとの警告です。「NEXT」は面白い本です。
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■『ポジティブな「異形の身体」』
★気づき
マッシュ・バーニー、村上隆、奈良美智、コムデギャルソン、アレクサンダー・マックイーン、ヴィクター&ロルフ。
歪曲された肉体、多様な形の身体、醜悪すれすれな異形な身体イメージ。コムデギャルソンのテーマが「ブローグ・ブライド(壊された花嫁)」。このような変
容な身体、異形な身体は、西洋近代が築いてきた安定した世界観がほころびを見せかつて理想とされてきた均整のとれた健康な身体像が問われているからだろ
う。
私たちの生活空間の基礎となっている西洋近代は、標準化・均質化された身体像を押しつけてきた。しかし、そんな理想では現在の多様な生き方はもうカバー出
来ない。現在のアート、ファッションの異形な身体は人を驚かせるためだけの見せ物でも荒唐無稽なファンタジーでもなく、むしろ新しい身体の可能性をポジ
ティブに模索したものではないか。
成実弘至 京都造形芸術大学助教授 朝日新聞2005.9.30
★コメント
同質、等質からは新しい概念は生まれてこない。異質をどう創るか、取り込むかが大切です。異質に寛容になろう、そして同質、等質を否定してみよう。自分の中に異質を作ろう。
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■『ミクロの進化「運」が左右』
★気づき
「サバイバル・オブ・ザ・ラッキエスト」(運のいい者が生き残る)。
国立遺伝学研究所の故木村資生教授(1924?94)の言葉を借りれば、進化の末に誕生した人類は、よほど幸運が重なった偶然の産物だ。
環境に適応した生物が子孫を多く残し、その特徴が集団に広がる、という「適者生存」を柱とするダーウィンの「自然選択説」万能の時代。68年、木村さんは
英科学誌ネイチャーに常識を覆す説を発表した。突然変異のうち、生存に有利なものはそもそもわずかしかない。大多数は有利でも不利でもない「中立」な変異
で、それが長い時間をかけて偶然集団に広がった(「中立説」)。
分子レベルの変異が集団内でどう増えたり減ったりするのかを、確率モデルを作って計算。「中立説」を数学的に示した。
翌69年、海外の研究者らが「分子時計」を使い、中立説の妥当性を主張した。
生物のタンパク質で特定のアミノ酸配列の違いを調べると、違いは共通の祖先から分岐してからの時間に比例する。これが分子時計。自然選択説が導く答えでは、比例するとは限らない。(出所不明です。すみません)
★コメント
たまたまの偶然化、偶有性が大事ですが、偶然化、偶有性をコントロールするにはどうするのかとふと考えてしまいます。どうするのかな。
日本オリエンテーション 主宰 松本勝英
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★マイカレンダー 2008年3月4日(火)?3月17日(月)
3月5日(水)「商品開発の成功・失敗体験から学ぶ」セミナーを聴講。企業の生の話は参考になります。仮説と結果のギャップをどう早くフィードバックするかの体制の重要性。新規テーマを成功に導くにはリーダーのバイタリティの大切さなど。
夜は、コンセプト開発のプログラムについて開発者からプレゼンを受け、ディスカッション。自学ソフトとして興味を持ちました。興味ある方は日本オリエンテーションへお問い合わせを。
6日(木)コンサルティング2件。脳がフル回転。シーズをコンセプトへ、面白い切り口が出たのでちょっとほっと。後半はまとめの一歩手前。
7日(金)商品コンセプト開発の社内教育のテキスト作り。関西の企業の方が来社。
夜、大塚の「こなから」でいっぱい。ここのビールは今までに飲んだことがないおいしさです。グラスの薄さ、大きさ、冷やし具合、注ぎ方が一体になったおいしさです。
10日(月)11日(火)大阪、京都へ。コンサルティング、商品評価のシステムづくり。いつも帰りに寄る京都の行きつけ「京菜」へ行かずに直帰。ちょっと疲労気味。
12日(水)セミナー10時から17時まで講演。「商品開発マネージャー・リーダーの成功10訓」。戦略的目標の共有化。選択集中・単純明確・徹底卓越化
の大原則から、魅力商品開発と育成、人材・組織開発と継続的革新など。最後に私の現在テーマである「想いづくり」。一寸時間足らず。
13日(木)セミナー2時間の講演「商品評価システム」コンセプト・製品・競合の一貫したテスト方法について。新規HPの打ち合わせ。シンプルを基本に求
心力のあるHPにしたいと思っています。夜は、「マーケティングだべる会」。少人数でしたが話は盛り上がり、いろいろ考えることが多かったです。いま大き
な物語が必要では。
14日(金)ランチミーティング。オムライスとコロッケが絶品でした、ごちそうさまでした。2時間30分近い話し合いでしたが、すごく時間が短く感じられました。
夜は、恒例の研究会へ。消費者調査の結果を、生物学的、社会学的、心理学的、思想的に解釈するディスカッション。夜、パネル参加者と快食。話が9時過ぎまで続きました。
17日(月)コンサルティング。コンセプトの明確化とアイディア開発。ソフトの商品開発も面白いテーマです。
土日早朝一人で見る映画
「ノーカントリー」コーエン兄弟監督アカデミー受賞の話題作です。無表情で異様な殺し屋と逃げる逃亡者、そして傍観者的保安官の物語です。狂気と日常の対比。
見終わって何だったのかと考えてしまいますが、見ている人を引き込む力はすごい。
もう一度見てみようと思っています。
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■□■ 「MATSUMOTO・MINERAL」
■■■ 第208号 (2008/3/18) (c) 1999 Japan Orientation
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