1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

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考えるヒント:商品開発のセオリー スパーキング

22.「セグメンテーション・ナンバーワン戦略」

部分で1位に

 トップになることの重要性はみなさん認識していることと思いますが、なかなか業界ナンバーワン、カテゴリーナンバーワンになることは難しいのが現状です。全体で1位になれなければ、部分で1位になることを考える必要があります。その時の考え方がセグメンテーション戦略です。
しかし、セグメンテーションの考え方にちょっとした誤解があります。セグメンテーション=細分化、という誤解です。市場を細かく細分化することがセグメンテーションだという誤解は、非効率なマーケティング政策です。

「3次元発想」がだいじ

 セグメンテーションを考えるときにだいじになるのは、体積というイメージです。
面積のイメージで考えると、細分化して、狭く捉えると、マーケットが小さくなってしまい、市場としての魅力がありません。
それに対して、深さというイメージを追加すると、狭くても、深さが深ければ市場としては魅力的です。
 狭くても、深い市場、すなわちヘビー・ユース市場。
私はヘビー・ヘビーユース市場が重要だと考えています。毎週数本(2~3本)ぐらいしかビールを飲まないターゲットに商品を開発しても、魅力市場にはなりません。
1日に4~5本飲むヘビー層にとって魅力的な商品を開発した方が、魅力市場になります。
 私の周りにもそんなヘビー・ユーザーが何人かいます。調査会社の経営者、研究所の主任研究員、音楽のプロデューサーなどです。ビールメーカーの人たちではありません。ビールメーカーの人たちはあきれるほど、ビールが飲み続けられる特別な人たちです。
「ドラフトワン」はそんなヘビー・ユーザーの支持があったのではないでしょうか。
 また、現在は深くなくても、商品を出すことによって、深く耕すことが出来れば魅力市場になります。1日に1回しか使用しなかった人に、1日3回使う商品が開発できれば、魅力市場です。

セグメンテーションは特徴の明確化

 商品の特徴の「明確化」によって、市場を狭く、深く捉えることがセグメンテーションです。ターゲット、オケージョンを明確化することによって、商品の特徴を明確にすることが重要です。
 昔の話になりますが、セイコーが「ダイバーズウオッチ」を発売したときの事務所でのエピソードです。泳げもしない、ダイビングもしたことのない人が「『ダイバーズウオッチ』を買ったんです。」と自慢げに見せてくれたことがあります。彼女は「ダイバーズウオッチ」という記号と、デザインの特化された魅力を購入したのだと思います。
 特徴を明確化することによって、魅力を高め、設定していたターゲット以外の人たちも購入してくれる、そんな「求心力」をつけることが重要です。
真空ポンプで「キュー」と周辺市場のターゲットの人たちを吸い込むイメージです。

セグメントでマス市場を狙う

 もうひとつのセグメンテーションのポイントは、マス市場を狙うセグメンテーションです。
「タイレノール」という鎮痛剤があります。「タイレノール」は、アスピリンが飲めないアレルギーの人の鎮痛剤として、アメリカでヒットした商品です。アレルギーの人の鎮痛剤では、マーケットは小さく魅力的ではありません。
 鎮痛薬のヘビー・ユーザーは女性です。生理痛などで使用する人が多く、鎮痛剤にとっては魅力的市場です。これらの女性が鎮痛剤に求めているベネフィットは体に優しい鎮痛剤です。アレルギーの人でも安心して飲める鎮痛剤は、女性にとって魅力的です。ヒットの理由は、セグメントをして、特徴を明確にして、マスマーケットを狙うセグメンテーション戦略です。

ターゲット・セグメント、オケージョン・セグメント。チャネル・セグメント、エリア・セグメントなどで「セグメンテーション・ナンバーワン」を狙うヒントにしてください。

日本オリエンテーション 松本勝英

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