1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

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考えるヒント:商品開発のセオリー スパーキング

30. 商品開発・成功体質をつくる -5「責任の明確化」

いろいろな組織の壁

 商品開発のスピードが遅い、成功体質が出来ないなどの悩みの原因は「責任の不明確化」によることが原因です。
私のセミナーの参加者からよく聞く話ですが、「営業にいたときは、商品企画の人間は、何で、こんな売れそうもない商品をつくるのかと、疑問に感じていた。しかし、営業から商品企画部門に変わった途端、なぜ商品企画ががんばって開発した商品を、営業は一生懸命売ってくれないのか。」
責任の不明確による問題です。

 また、商品企画が研究に開発依頼をすると、「こんな商品は出来ないと、得々と語られ、なかなか先へ進まないことがよくある。客観的に出来ないと説明することが、優秀な研究者だと錯覚しているのでは。」これも組織の壁です。

 私はこんな時にこんな話をします。
「眼の中にメガネを入れる以上に難しいことなのか、コンタクトレンズの開発は、眼の中にメガネを入れようという発想から、研究者がブレークしたことによって生まれたのでは。」
また、「あなたが出来ないというなら、他社もできないとあきらめているかもしれない、出来たらヒットする可能性が高い、チャレンジしようよ。」
あなたも活用してみてください。

責任の明確化

 責任の明確化とは、各部門の目標の明確化です。

商品企画部門は、ターゲットの70%に支持されるコンセプトを開発する。
コンセプトテストでターゲットの70%以上に支持されるコンセプトを開発することが商品企画部門の役割。
・ 研究開発部門は、競合のトップ商品に60:40で勝てる製品の開発をする。
競合トップブランドとのブラインド・テストで、60対40で勝てる製品を開発することが研究開発部門の役割。
販売部門は、3カ月以内に50%以上のストアカバーを行う。
いくらよい商品が開発されたとしても、店頭に置かれていなければ売れません。
50%以上のストアカバーとは、1軒行って置いていなかったが、2軒目には置いてあるような配下状況です。
宣伝部門は、60%以上の認知率を確保する。
60%の認知は、急速に購入経験が増えていくターニングポイントです。
定量的な役割責任の一例です。
このように定量的に各部門の目標を明確にすることが出来れば、役割責任が明確になります。定量化できなくても、各部門の目標、役割責任を明記することが重要です。

リエゾンマン、遊撃隊

 役割、責任が不明確になるは「際の部分」です。研究開発部門と商品企画部門の「際」、商品企画部門と販売部門との「際」。この「際」の問題を解消する方法として、リエゾン組織(遊撃隊)が有効です。
私の知っている企業では、研究開発部門と、商品企画部門のコミュニケーションを円滑にするために、研究の担当が商品企画部門に出向して、商品企画部門が企画していることを技術用語に翻訳して、研究部門へ伝えていく役割をしています。研究と企画「際」がスムーズになります。

これからはプロデューサー

 これから必要になってくるのは、プロデューサー方式です。プロデューサーとは小さな社長みたいな役割です。映画のプロデューサーは、脚本の選定、監督、キャストの選定、撮影の運営進行、配給方法、広告、PRなど、全てに責任を持つ仕事です。もちろん、売り上げ、利益の責任も持っています。

 富士写真フイルム会長だった大西実氏は、「新商品を企画から開発まで実行できるプロデューサーをたくさんつくれ。事業起こしも同じで、事業のスタートから立ち上がりまで、きっちり責任を持って実行できる小社長を作っていきたい」ということを96年10月28日、日経産業新聞で述べていました。先見の明です。

 また、日産自動車の商品企画開発の横断チームもプロデューサー方式の一つです。 商品の企画・開発全般と発売後の利益確保に責任を持つプログラムディレクター(PD)=プロデューサーを中心に、開発、マーケティング、コスト管理を担当するマネジャー3人を配置。機能、市場動向、利益を最適にバランスさせるべく3人が縦横に議論し、市場に受け入れられ利益もでる車づくりを進めて行く方法です。

 組織の役割責任を明確にして、成功体質をつくっていく。重要な課題です。

日本オリエンテーション 松本勝英

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