ニーズを発見・開発するのに定型的方法はない。事実から新しい情報を創造することがニーズ開発。時代・市場・生活価値観の変化を引き抜き、仮説提案をすることがこれからのニーズ開発です。これらを踏まえて、今までのニーズリサーチ、ニーズ開発の問題点を考えてみたいと思います。
データでは消費者の顔は見えない商品開発に必要な情報は、売り上げデータの裏にある消費者の意識、気持ち、不満、期待などの生の声です。データでは生々しい生の声、声にならない声は聞こえてきません。
昔々の話ですが、洗剤メーカーが、泡のない洗剤開発が望まれているというデータをもとに無気泡性洗剤を開発して、大失敗をしたことがありました。
消費者の洗濯現場をみれば、泡が汚れを取る視覚確認の重要な要素だということが分かるはずです。データからはそこまで見えません。
調査で、平均というデータはあるが、平均という事実はない、ということが言われています。平均所有枚数という事実はなく、少ない枚数所有者と、多い枚数所有者の、それを平均すると平均枚数というデータになるが、実際は平均枚数を所有している人はいない。平均というデータの幽霊です。
データは失敗したときの言い訳とか、自分に都合のよいデータを揃えて、説得するための裏付けに使用されているのでは?
特に官庁などはデータを失敗の言い訳に活用している代表例では。
また、新聞、雑誌などで、今の流行は、来年のヒット予測、魅力的ターゲットはLOHASとか、なかなかこれがくせ者です。取材を受けた経験者ならおわかりになると思いますが、自分の言ったことと、記事になったことがなぜこんなに違うのか。新聞、雑誌で興味ある情報なら、情報源に再度当たるとか、現場に行ってみて自分の目で確認するなどの情報の検証が必要です。
「会って会って会いまくれ」トヨタの社内メッセージに、「会って会って会いまくれ」という言葉があります。
人と会って話をする、その時その時の話し手の表情や熱意は重要な情報になります。現場で消費者のホンネに耳を傾け、表情、行動を読まなければ、本当の姿は見えてきません。
市場探検は、現場で生の声を聞くよいチャンスです。私も企業の開発担当者を連れて、いろいろな市場探検に行きます。デザート開発のための「デザート探検隊」、高級商品市場をみるための「ドイツ、スイス時計店探検隊」、女子中高生の実体を見に「原宿探検隊」、高年者の「巣鴨とげ抜き地蔵通り探検隊」いろいろです。そこで気になることは、企業の人は人と話をしない、問いを発しない、感じない、メモをしないことです。これらのトレーニングをしないと探検に行ってもヒントは得られません。
ニーズリサーチ、ニーズ開発は、これらの現場の生の声を、イキイキとした生活シナリオにしていくことです。
感性が理性をリード感性とは、ナマの経験に基づく、状況に対する的確な判断力だと考えています。
現場で、「物事を瞬間的に感じ取る」直感と「物事の本質をいきなり直接的に見抜くこと」の直観を磨くことです。それらを検証していくことは理性です。
私にとって感性を高めるトレーニングは、WHY力を高めること、何か気になったことがあった時、なぜ気になるのかの問いを発して、気になったWHYを考えることです。
また、自分の行動を内観してみて、なぜ私は、このトートバッグを購入したのか。自由でありたい、サラリーマンらしくない、どんどん入れられて便利、決定的理由は何だったのか。自分の購入行動を内観してみることは感性を高めるのに有効です。自分の行動も分からないのに、他人の行動、話の真意は見抜けません。
昔、女性の気持ちを理解したいと思い「更級日記」、20歳の人の気持ちを理解したいと「20歳の日記」をつけたことがあります。商品を買うときに女性だったら、20歳の人だったら何を買うかを予測して、お店の人に聞いてみることを1年ほどやっていました。少しずつですが、何を買うか、その買うときの気持ちが分かるようになってきました。
ちなみに、私の感性教科書はハードボイルドです。特にロバート・パーカーの「スペンサーシリーズ」の人の描写力、状況の描写力は参考になります。
ホンネを教えてもらういくら情報でも、タテマエの情報では意味がありません。タテマエ=建前とは、家を建てるときの近所への挨拶を指す公的な情報です。それに対してホンネとは、井戸端会議などで語られる私的な情報です。
調査という公的な情報収集ではタテマエ的意見が多くなります。私的にこの人に教えてあげたいという状況づくり、関係づくりがホンネ情報を得るためには重要です。オフレコ情報でメモを取ると特ダネにはなりません。グループインタビューで笑いがない状況ではホンネはでてきません。
メールによるフリーアンサーの調査は案外ホンネがでてきます。調べられている感じがしないからでは。
「調べる」から「教えてもらう」がホンネを得るコツです。
真のニーズに出来るだけ迫るように努力をしたいと考えています。
日本オリエンテーション 松本勝英
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