51.「製品を売る」から「生活メリット・効用」を売る
「製品を売る」から「生活メリット・効用を売る」
前回は「毛布」を売るのではなく「自然な快眠」を売るということについて話をしました。
昔、某洗剤メーカーの人から聞いた話です。
「消費者からの相談、悩みを一元的に対応するシステムを開発しています。
台所のレンジフードを例にあげて説明しますと、レンジフードをきれいにしたいとの消費者の電話相談に対して、レンジフードの分解方法、きれいに洗浄する方法、使う用具、使う洗剤などについて具体的なアドバイスが出来ることを考えています。」
私はこの話を聞いたときに、このメーカーは「洗剤を売る」のではなく「清潔売る」企業であり、製品ではなく、生活メリット・効用を提案する企業だと感心したことがありました。
消費者が求めているのは「清潔」であって「洗剤」ではないのです。
この点が大事なことなのですが、徹底している企業はまれです。
「生活メリット・効用」と「製品」の相違
「生活メリット・効用」と「製品」の相違を理解する、マーケティング業界での有名な話があります。
レブロンという化粧品の社長の話として語られています。
「当社は工場では化粧品という製品を作っているが、店頭で売っているのは美しくなれる希望です。消費者は美しくなれる希望を欲して化粧品を買っているのです。」
求めているのは「美しくなれる希望」です。それをよりよく満たしてくれるから、消費者は化粧品という製品を買っているのです。
もし、エステティックが化粧品より、より美しくなれる希望を満たすことになるなら、女性は化粧品よりエステティックにお金を払うことになります。
また、美容整形が安心して出来るなら、これからは美容整形がこのマーケットを獲得していくことになるでしょう。顔に眉毛を描くプチ整形はいま気軽に行われています。
アメリカのマーケティング学者レビットの話も有名な話です。
1/4インチのドリルが100万本売れた、ドリルメーカーの社長の話です。「ユーザーが欲しているのは、1/4インチのドリルではなく、1/4インチの穴だ。もし、いまのドリルより安価に、正確に穴を開ける企業が現れたら当社は倒産してしまう。当社はドリルのメーカーではなく、穴を開けるメーカーにならなければならない。」
ユーザーが欲しているのは「穴」であって、いまはドリルが安価に、正確に穴を開けるので売れている。ドリルより安価に正確に穴を開ける方法を開発することが、ユーザーの期待に応えることです。
これも有名な話です。
消費者は旅行手段として、陸も、海も、空も利用でき、安価な維持費と楽に管理できる理想的な旅行手段を望んでいる。それは何か。
答えはVISAカードなどのカードです。消費者の求めている「生活メリット・効用」を満たすことの出来るサービスが消費者の満足です。
既存の製品メーカーである毛布メーカー、化粧品メーカー、洗剤メーカー、ドリルメーカーから、生活メリット・効用を提供するメーカーとして、快眠メーカー、美しくなれる希望メーカー、清潔メーカー、穴のメーカーに変化することが重要です。
消費者は、菓子に、冷凍食品に、飲料に、アルコール飲料に、自動車に、住宅に、エンターテイメントに、パチンコに、どんな「生活メリット・効用」を求めているのでしょうか。
また、生活の中で、どのような新しい「生活メリット・効用」を期待しているのでしょうか。
その期待に応えるためにどのような製品を開発するかが、「生活メリット・効用」をベースにした商品開発です。商品コンセプト開発の出発点です。
日本オリエンテーション 松本勝英
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