6. 遊動化
動物はサルなどの霊長類も含めてみな「動き暮らし」を本来のスタイルとしてきました。その中で農耕を発明した人間が一ヶ所に集まって定住するようになり、現在の生活スタイルが出来上がりました。農耕中心の生活から離れた現在、都会の生活は「動き暮らし」に近づいているのでは?
地下鉄の中で化粧をしている若い女性を見かける機会が増えています。食事などをしている人も見かけられます。
JR埼京線の満員のホームの上でカップラーメンを食べている若者を見ました。コンビニの前で座りながら食事をしている若い人もよく見受けられます。生活がどんどん外へ染み出してきています。電車の中、路上でキスをしている若いカップルを見る機会も増えてきました。将来はセックスを外でするのも一般化するかもしれません。
家庭という私的な第1の空間、会社・学校などの公的な第2の空間に対して、今、家庭でもない、会社・学校でもない第3の生活空間が生まれています。街場、交通機関などがそれで、これらの空間が新しい市場を生んでいます。
携帯電話は電話を「家庭内使用」から「家庭外使用」へ変えました。水を使わないシャンプーが売り出され、介護用商品として展開されていますが、これを介護用商品としてみるだけでなく、地下鉄の中で、会社の帰りに化粧室で、いつでも、どこでもしたいときに出来るシャンプーとすれば魅力的商品になるのではないかと思います。シャンプーは家の中で、浴室の中でするものだと決めつける定住化思考に陥ってはいませんか?
定住生活において商品が使用されていた「場所」や「時間」といった制約を一度はずして「遊牧民」の生活をイメージし、そこに当てはまる商品を考えてみる。現代に生きる都市遊牧民達が街場、電車の中などの新しい生活空間で、食べる、寝る、仕事、勉強、コミュニケーションその他いろいろな生活を楽々出来るようにするための、そんな商品がこれから望まれているのではないでしょうか。
日本オリエンテーション 松本勝英
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