1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「マツモトミネラル」

マツモトミネラル第157号

配信日:2006年03月22日

第157号
『ありそうでなかったもの』『記憶を書く』『テレビの魅力』『ドラマ界は絆の時代』『だまされる心』

3月22日、事務所の桜が咲き出しました。私の自宅(板橋区小豆沢)の
前の森で、ウグイスが鳴いています。春本番です。何か浮き浮きしていて、
体内のエネルギーが動いています。
今日は事務所で、手打ち蕎麦の会「織り縁亭」を催します。ちょっと幸せな
気分です。

■『ありそうでなかったもの』
★解  説
 ありそうでなかったものを。よく耳にする批判の言葉を「僕は表現する
前からそこにあったということ」と解釈する。人と、ものと、環境との関
係が、おのずから輪郭を形づくるのであり、デザイナーはその線を見いだ
すのが仕事。
自分の主観など一切消してしまいたい、とまで言い切る。
かって俳人の高浜虚子が唱えた「客観写生」という理念を知り、デザイン
感が揺らいだ。主観を消し、淡々と描写してこそ、人々の共感を呼ぶので
はないか。
デザインとは自己主張だと思っていたから、どうしても<私>というエゴ
がでる。わだかまりを取り除き、客観的になると力が抜け、限りなくわい
てくるようになってきた。そのデザインが、これほど受けるのは、自分が
変哲もない風景や生活の中から見いだす輪郭は、みんなが見えるはずだか
ら。星座のようにこの星を結べば足、ここが鼻、と教えていくと「ああ、
ここがしっぽね」と分かるのに似ている。主観を排したデザインに個性が
ある。「それは手の癖、匂いみたいなものでしょうね。消したいけれど出
てしまいますね」
                  深澤直人氏 読売新聞2005.12.03
★ミネラル
 商品は商品そのものがあるのではなく、人と、空間との関係によって存
在する。共感という関係ができたときに魅力が生まれてくるのでは。私の
コンセプト開発観です。魅力的なデザイン論です。共感。
・・・‥‥……………‥・・‥………………‥‥・・

■『記憶を書く』
★解  説
 「記憶とは、その人が作る物語。つらく悲しい出来事も変形したり削除
したりして心に収めている」人間を書くことはその人が積み重ねた記憶。
その人が過去に何を失ったかを書くことだ。言葉は現実のものや存在感が
強いものを表現するには不自由な道具。目に見えない過去や記憶を書くと
きに、本来の力を発揮する。「時には心の空白に目を向ける。記憶の底に
沈んだものを見つめる時間が内面を高める」「究極な喪失は自分の死。
私たちは喪失を体験することでその準備をしている」
                  小川洋子氏 日経新聞2005.06.10

★ミネラル
 私も自分の生き方、死に方の文章を書いています。過去の強い記憶、薄
くなっていく記憶、消したい記憶いろいろな記憶が浮かんできて、ほんの
少し自分がわかってきているような感じがしています。
・・・‥‥……………‥・・‥…………………‥‥・・

 ■『テレビの魅力』
★解  説
 テレビの魅力 デリダによる分析 テレビの「テレ」は遠く隔たったと
いう意味だが、現代の社会は電話、インターネットを含めた「テレテクノ
ロジー(遠隔技術)」に支配されている。日常流れる時間も人工物で、現
実の出来事のように見えるのはメディアという「虚構の送り状」を通して
人工的に加工されたものにすぎない。虚構の空間では見せ物性が優先され
る。わかりにくいもの、異質なものは排除され、複雑な政治問題よりも政
治家の見かけの行動が脚光を浴びる。さらに、遠隔技術は遠い空間だけで
なく、複製化によって過去の時間も結びつける。そのために人間は深刻な
知覚の変容に直面し、一段とテレビ的なものに頼るしかなくなっている。
「テレビは我が家に世界的なものを刻々と導き入れる。」ところが違法の
ものに囲まれた人々はむしろ孤立を感じ、閉ざされた「自分の家」に回帰
しようとする。遠隔技術の加速化と旧いナショナリズムは対極にあるので
はなく「両者の運動は一体のものだ」
         清水克雄氏 朝日新聞編集委員 朝日新聞2005.10.25

★ミネラル
 テレビを通して現実を把握することの問題を指摘しています。テレビ
(遠隔の)情報は過剰になり、、リアルでないことがリアルとして感じら
れる虚を作ってしまう。行ったことのない温泉町に行ったことがあるよう
な感じがすることがあります。何回も同じ温泉の映像を見ているとそんな
現象が生まれてしまう危険があります。
・・・‥‥……………‥・・‥…………………‥‥・・

■『ドラマ界は絆の時代』
★解  説
 「ドラマ界は「絆」の時代 フジ系の「エンジン」。親子、家族の絆に
対する異変。例え血縁がなくても、性格が違う同士でも絆を深めることが
できるメッセージを。「瑠璃の島」(日本テレビ系)「あいくるしい」
(TBS系)。心に傷を負った人々が、その傷を癒すために新しい絆を求
めている。」
                真田真文氏 法政大学教授メディア論

★ミネラル
 テレビドラマを見ていないのでよくわかりませんが、絆はいま重要な課
題です。
家族との絆、仲間との絆が問われています。夫婦メンテナンス、家族メン
テナンス、仲間メンテナンスは、マーケティングの大きなテーマでは。
 ・・・‥‥……………・・‥…………………‥‥・・

■『だまされる心』
★解  説
 だまされる心 「人間はだまされて当たり前」 多かれ少なかれ、人間
の認識にはだましが潜んでいる。正確に認識しないこと、あいまいに、あ
るいは都合よく物事をゆがめて捉えることが行われている。自己認識があ
まり正確だと、鬱病になりかねない。いらざる摩擦や自己嫌悪を回避する
知恵は、一種のだましといえる。だまされるのは、ある種の権威を伴った
社会的な情報。その情報を掲載したメディアを信頼して、怪しい情報を真
に受ける。
また、人間の持っている道へのあこがれ。隠れた原理への渇望、不確実な
未来を見通せる特別な方法があると信じたい心が、常識はずれのカルトも
受け入れてしまう。自己決定の代行もだまされる原因。自分ではなかなか
決められない選択を、占いは背中を押して決めてくれる。無意識の推論に
よる錯誤。私たちは、印象に残るうまくいったことだけを集めて推論して
しまう。私はこれでがんを治した例など。
   菊池聡氏 信州大学助教授 専門認知心理学 日経新聞2005.07.08

★ミネラル
 15年ほど前に、養老猛さんに脳は脳をだますのですかと聞いたことが
ありました。脳が脳をだますということを考えるとなかなか難しくなると
いう話だったような気がします。だまされることは生きていくことにとっ
て大事なことですが、だまされてはいけないこと、だまされてもいいこと。
その見極めができるといいのでは。 

                日本オリエンテーション 主宰 松本勝英

★マイカレンダー3月6日(月)?3月20日(月)    
   今回は社内教育セミナー2社、公開セミナー3日、コンサルティング3社、
企業訪問2社、企業の方来社1社。映画2本。風邪6日。

6日(月)生活研究コンサルティング。生活テーマの確定、「生活ナレッジ・
マイニング」の設計。夜、企業の方が来社。異業種へ転職した方で、新しい
業種でのマーケティングの考え方について相談。
  7日(火)10時?17時まで社内教育。研究部門の方々にマーケティングの考
  え方。いろいろ話そうと思っていましたが、ちょっと時間不足。

9日(水)仕事がキャンセルになったので社内仕事。夜、飲みたくなり、
人を誘って表参道へ。表参道ヒルズをちょっと見て、2人(相手は女性)で
焼酎1本まるまる飲む。
10日(金)「商品開発大全」セミナー。コーディネーターとして司会進行。
夜、コンサルティング。商品開発の切り口開発。
11日(土)朝一番映画に。「パリ・テキサス」で感動を与えた、わたしの
好きな映画監督ヴイム・ヴェンダース、サム・シェパードの「アメリカ、家
族のいる風景」を見る。女性の強さ、しなやかさと、男のダメさと孤独感を、
ヴェンダース独特の哀感ある映像で深く入ってしまいました。
12日(日)折口信夫の小説の映画化「死人の書」を見る。人形アニメで、
魂を鎮める映画で、魅了されました。

13日(月)事務所にいるインターンの卒論のプレゼンを聞く。まだまだだ
けど、新鮮な見方が数々あって、楽しかったです。
14日(火)20年来の友人来社。社会に役立つ仕事をしたいと話し合う。
午後、飲料企業訪問。通信販売の戦略的アプローチ、「生活ナレッジ・マイ
ニング」について。
15日(水)午前、企業で「健康生活ナレッジ」の打ち合わせ。
夜、コンサルティング。なぜ売れているかのWHY分析。
16日(木)・17日(金)「商品開発プログラムのたて方」セミナー。
12時間の講義。セミナー参加者からの課題発表があり、実践的なディスカッ
ションが有意義でした。風邪気味でちょっとしんどい2日間でした。
20日(月)社内教育。風邪でふわふわ。どうにか4時間話をしました。
帰って、マツモト・ミネラルの原稿づくり。

・■■■………………………………………………………………………‥‥・・
 ■□■ 「MATSUMOTO・MINERAL」
 ■■■ 第157号 (2006/3/22) (c) 1999 Japan Orientation
・・‥‥………………………………………………………………………‥‥・・

前のミネラル 次のミネラル