1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

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考えるヒント:メルマガ「マツモトミネラル」

マツモトミネラル第163号

配信日:2006年06月20日

第163号
『ネット社会で新しい人格が生まれる』『“いのち”と“こころ”』『新・欲望論』『物質文明より生命文明』『デジタル化する人間の眼』


16日(金)17日(土)総勢9人、福島県会津で「商品開発車座塾」を開きました。
9時間のディスカッションと食事、温泉に入りながらの話し合いも有意義でした。
たまには企業を離れて考えることも必要では。
   
今回は、作家、科学者、建築家、写真家の方々の現代の視点を取り上げてみまし
た。鋭い現代への警笛です。

■『ネット社会で新しい人格が生まれる』
★解  説
 ネット社会で新しい人格が生まれる。「顔がポイント」に興味。
人は顔さえわからなければすべてをさらけ出すことが出来るのか。果たしてそ
の姿は本当の自分なのか。ネット社会では、顔がないことによって新しい人格
が生まれてくるのではないか。社会の規範から解放され、欲望に忠実に振る舞
うことが出来るようになり、極端に快楽的になったりする。自分の母親を毒殺
しようとした少女がその様子をネットに記す例もでてきた。ネット社会で問題
なのは主体に「ゆらぎ」が生じることです。かつては自分があって、ネットの
世界があり、両者は切り離されていた。しかし、その境がなくなり、現実仮想
現実が相互に浸透しあい、ネットの社会で書いていることこそ本当の自分だと
思い込みまで出てきた。そうなると現実の人間関係が希薄になってきます。
                平野啓一郎氏 作家 日経新聞2006.04.19

★ミネラル
 顔がなくなることによって欲望が肥大化、快楽化していく。
これからの時代は、予測できないような快楽現象が生じてくるのでは。
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■『“いのち”と“こころ”』
★解  説
 今考えなければならないことは、“いのち”と“こころ”。
問題は、なんにでもすぐ答えを出したがりすぎているところにあるのではない
かと考え、そこからきっかけを探す試みをする。現代の特徴は、科学技術の成
果である便利さ。
その便利さに重きを置きすぎていること。草花でも子供でも生き物を育てるこ
とを考えたら「唯一の正しい答え・効率・思い通り」という考え方が、いかに
生き物に合わないことは明らか。
         中村桂子氏 JT生命誌研究館館長 読売新聞2006.01.19

★ミネラル
 科学による便利に依存することが大きな問題。「育むこと」が重要では。
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■『新・欲望論』
★解  説
 欲望は、高度な消費社会では「私」から離れて、つくられるものになってい
く。そこでは名声や幸福といった抽象的な欲望さえ、目と耳に訴える情報に外
部化され、置換されるのが普通の光景である。たとえば、家が欲しい「私」は
ピカピカの空間や家族の笑顔の映像に置換された新築マンションの広告に見入
る。そこにいるのは美しい映像情報に見入る「私」であり、家族の笑顔を脳に
定着させる「私」であって、単に家が欲しい漠とした「私」はずっと後ろに退
いている。代わりに家族の笑顔を見たい「私」が前面に現れ、それは映像の中
の新築マンションと結びついて、欲望は具体的なかたちになる。けれども、こ
うしたかたちになった欲望は、ほんとうに「私」の欲望か。「私」は確かに家
が欲しかったのだけれども、その欲望は正しくこういうかたちをしていたのか。
仮に、確かに家族の笑顔を見たいがために家が欲しかったのだとしても、家と
いう欲望と、家族の笑顔という欲望は本来別のものであり、これを1つにした
のは「私」ではない、広告である。このように、消費者と名付けられたときか
ら「私」は誰かが作り出した欲望のサイクルに取り込まれている。こうして、
欲望から「私」が消え、欲望のための欲望と化して、現代社会はある。
                     高村薫氏 朝日新聞2006.01.05

★ミネラル
 欲望は本来自分の内の中にあるものなのに、現在は外からの刺激によって欲
望が喚起される。それは本当に私の欲望なのか。欲望は幻想になりつつある。
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■『物質文明より生命文明』
★解  説
  物質文明より生命文明 「三鷹天命反転住宅」は生病老死に対する全否定。
「現実とは、物質と観察者の関わり合いであり、物質そのものの性質ではない」
(物理学者のニールス・ボーア)観察者と物質とのかかわりは何百種類もある。
だから、現実だって何百種類もある。すべての感覚が、固定されたひとつの主
体の属するような考え方はおかしい。人間には細胞の数だけ感覚があるのに、
使っているのは五感だけなんだ。僕たちという有機体には、ものすごく可能性
がある。それなのに、まだ何も知っていない。生命を知らないのにどうして死
がわかるのか。「三鷹天命反転住宅」は、「死なない」方向に進むための用具
なんです。何で、大きな墓のようなビルに部屋を買い、宝でもないのに持ち腐
れたまんま消えていく。なぜもっと真剣に生命を維持するための産業をはじめ
ようとしないのか。
                    荒川修作氏 読売新聞2006.4.18

★ミネラル
 刺激的ですね。生命感覚を体で感じる、そんな刺激的なマーケティングをし
てみたいですね。
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■『デジタル化する人間の眼』
★解  説 
 デジタル化する人間の眼 眼がデジタル化して、見た目に派手な映像を求め
始めた。階調表現が豊富であるということは、見た目が地味に見え、階調表現
の幅が狭いということはコントラストが高くなり、見た目に派手になる。
色の派手さ加減である、フィルムの彩度においても、かってのフィルムの彩度
が自然に近い地味な色であるとするなら、今主流になっているフィルムの彩度
はすでに飽和点に達しつつあるほど高く、人工的なものになっている。例えば
木の葉ひとつ撮っても、その緑の色は実際の色とは似ても似つかない、あたか
も造花の葉のように派手な色としてフィルムに定着される。このことは視角も
自然ではない派手な色を記憶色として脳内に定着させ、それを「きれい」と感
じるデジタル的感性になっている。そのような現代人の視角が階調の間引きと
彩度の飽和点を求めるようになったのは、環境の変化に追うところが大きいの
ではないか。
まずは日本列島の総都市化によって自然の地味な色から人工物の派手な色へと
環境が激変した。また第二の視角環境ともいえるテレビモニターの色は人工化
して第一環境の彩度や階調に比べ、さらに派手だ。また、第三の視角環境にな
りつつあるテレビゲームやパソコンのモニターはさらにこの傾向が顕著である。
パソコンモニターはお互いの競争原理から近年ますます彩度とコントラスト比
を高める傾向にあり、モニター上で画像をつくりこまねばならない。
プロの写真家は標準色が再現できなくなっている。人間の眼の感性は恐るべき
ことに、わずか10秒間で人間の眼の感性は瞬間的に変化するのだ。自然な色
を見せた後、派手な色の風景を見せると、最初に見た自然な風景は精彩を欠い
たものとして脳が錯覚してしまう。アナログからデジタルへの移行は、そうい
った現代人の感性のデジタル化と同時進行の出来事である。縦縞の飼育小屋で
育ったネコは横縞が見えなくなるという衝撃的な実験がある。
どうやら2000年代の人類は、その猫の生態に似てきているようだ。
                藤原新也氏 写真家、作家 朝日2006.4.3

★ミネラル
 人間がデジタル感覚を持つ。視覚はドンドン刺激的になっている。
デジタル刺激の氾濫する中で、自然は生彩を失っていく。自然との回路を失っ
ていくことは何を意味するのか。
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                 日本オリエンテーション 主宰 松本勝英

★マイカレンダー 6月5日(月)?6月19日(月)    
コンサルティング、商品開発社内セッション、社内教育、「商品開発プログラ
ムのたて方<30+6>時間」セミナー、マーケティング部長&役員の会「5人会」、
「商品開発車座塾」などいろいろありました。

7日(水)商品開発社内セッションは、今日的課題解決、切り口開発のためのセ
ッションです。
生活DELIGHTコンセプト開発、健康コンセプト開発など、おもしろい結果
が得られるのでは。

9日(金)社内教育で、四国へ。帰りに、四万十川、高知で、おいしい魚をたら
ふく食す。
14日(水)・15日(木)「商品開発プログラムのたて方<30+6>時間」セミナー。
ネーミング、パッケージによる外見のサプライズ化。新商品導入のためのサクセス
シナリオ開発の2日間。まだ風邪が残っていてちょっとハードでした。
15日(木)夜、商品開発、マーケティング部門の部長、役員の方々による「5
人会」。参加者は8人。非成長市場の市場と組織の活性化、グローバル視点、新
カテゴリーの開発などいろいろ論議。

16(金)17日(土)福島県会津で「商品開発車座塾」合宿。
ものあふれ時代のマーケティングについていろいろ議論。新しい方向がみえてき
ました。


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 ■□■ 「MATSUMOTO・MINERAL」
 ■■■ 第163号 (2006/6/20) (c) 1999 Japan Orientation
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