配信日:2014年3月3日
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■■■ 官能開発のメールマガジン
■□■ ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■ 発行者:日本オリエンテーション
■□■ 毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.20□■
官能を使って価値を開発する【官能開発】のことをお話させていただきます。
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同 高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英の共同メルマガです。回を重ねて、20号になります。
◆INDEX
1.『消費者の官能表現の読み取り』大西正巳
官能用語には時代や世代の影響を殆ど受けないものと定義や用法が変わるものがあります。出来るだけモノを挟み、質的な意味合いを理解することが大切です。
2.『感性価値を密室から引き出す』高橋正二郎
味・香り・感触などの感性価値にかかわる情報は暗黙知になりやすく、密室の奥に潜んでいることがあります。この情報を視覚化されたかたちで共有化をすれば、宣伝や販売の強力な力になるだけではなく、翻って感性価値そのものを高める力にもなります。
■「消費者の官能表現の読み取り」大西正巳
自分と他人が同じモノを官能しても特徴の捉え方と表現法などが一致するとは限りません。官能評価や中味設計のプロ同士であっても常にQDAの基本となる官能用語と定義、そして基準サンプルの特徴とその強さを共有し、またリファインしていく必要があります。一方、メーカー側と消費者の官能法や用語、その意味合いは更にバイアスが大きくなるため、適宜モノを挟んでお互いの官能結果の中身を確認することが大切です。ただ消費者の官能結果や嗜好が自分とは差異があるにしても自分の官能基準を他に合わせ、すり寄るというのは得策ではないと思います。まずは自分の評価方法と基準を確立した上で消費者の官能の方向性とキョリの差を常々把握し、官能時の表情や動作の観察を含めて読み取ることが重要です。つまり「中心地」を固めて、そこから他人の感覚特性や官能データ、そして現象的な流れを分析する方が望ましいと思います。その際、官能的な差異を把握し、専門パネルと消費者間の言葉や意味合いの「翻訳表/対比表」をこまめに作成・充実していくことが大切です。これはメーカー側と消費者との本質的なコミュニケーション・ツールとしても有用です。
消費者の用いる言葉の中で、まろやか、華やか、爽やか、本格的、飲みやすい、甘い感じ、熟成感、刺激感、フルーティなどの総括的な用語や情緒的な用語は、人によってイメージがバラツキ気味です。また好き・嫌いを間接的に示す場合の言葉として用いられることもあります。総括用語で表現されたイメージは具体的に展開した二次用語により意味合いを確認する、あるいは比較サンプルを用いて方向を絞り込む必要があります。例えば酒類では多くの人が「飲みやすい」という言葉を用いますが、その中味的な方向は二つあると思います。一般的には「クセや刺激感がなくスムーズな口当たり」が中心になります。しかし、飲用経験を積んだ消費者では「好きな香味/期待する香味が十分に感じられる」という意味合いが強くなります。従って「飲みやすい製品」の設計に当たっては、前者向けには「ライト/マイルドな香味の設計」、そして後者では狙ったターゲットが求める「香味の厚み/複雑さを盛り込んだ設計」がポイントになりそうです。つまり言葉の捉え方次第で製品のパフォーマンスや飲用場面のあり方が異なってきます。一方、具体的な物質名で表す特徴や「何かをした時に感じる香り」のようにプロセスから発する特徴についてはイメージ上のバラツキは比較的小さいと思えます。いずれにせよ、我々はモノや状態をみてその特徴を言葉で表しますが、反対に、言葉はモノの特徴をイメージさせます。言葉ひとつで描く姿かたちは変わってくるため、官能評価/開発は「言葉に始まり、言葉で終わる」と言っても過言ではありません。
■「感性価値を密室から引き出す」高橋正二郎
おいしい味や素敵な香り、そして気持ちの良い感触などの感性価値は、往々にして数少ないメンバーによって開発されていることがあります。感性価値は扱い難いもので、長年の経験がある感性価値に特出した人、いわばそのメーカーの名人・達人に任されていることがあります。極端な場合は、社長を始め多くの重要ポストの人たちも、感性価値には全くノータッチということさえあります。暗黙知になりやすい感性価値の一面を示していますが、これでは密室の決定と言っても過言ではありません。このような状態は機密保持の面では都合が良いかもしれませんが、それ以外は何も良いことがありません。感性価値に対する情報は密室から出ないかぎりは、感性価値に対する情報は社内に共有化はできません。また、たとえ情報が開示されても、当事者以外は情報の意味や価値もわからないので、活用はできないと思われます。こんな状態では、できあがった商品の感性価値がお客さまの求めるものと深刻な乖離が起きていたら、それこそ取り返しのつかないことになります。
また、ここまで極端ではないにしろ感性価値の評価にかかわるデータや情報は社内に開示されない例も実に多く存在します。研究員が苦労して試作の改良を重ね、やっと最終試作品に漕ぎつけたところでやっと官能評価が実施され、そのデータは工場で品質管理の標準になるだけで、他の部門には開示はされていないことも見受けられます。
この2例から全てを決めつけるわけにはいきませんが、実にもったいないです。感性価値はお客さまの心の琴線に触れることのできる力がありますので、これを告知や販売に生かさなくては商品の価値の訴求は当然不十分です。そのため販売や宣伝制作の現場では、仕方なしの素人仕事で訴求情報の開発をしますので、商品コンセプトとの整合性が維持できないことも多いのが現実です。
この密室の奥に潜む感性価値にまつわる情報が、QDAという視覚化された情報が社内の必要な部門に開示されれば、どれほど大きなメリットをもたらすでしょうか。広告制作の場ではお客さまの共感を呼ぶ訴求が可能になるでしょう。また、販売の現場ではお客さまの購入に直結する推奨の言葉をPOPにしたり、あるいは直接お客さまに語りかけたりすることも可能でしょう。そして、いずれはお客さまの反応や要望がフィードバックのかたちで遡ってきます。こうなると、お客さまの求める感性価値を的確に開発できることになります。
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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。お待ちしています。
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◆プロの知恵によるカウンセリング、コンサルティングを受けてみませんか
・SDP研究所の官能開発のカウセリングを導入してみてください。
・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。
■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。
■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを30年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。
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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第20号(2014/03/03) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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