配信日:2014年4月1日
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■■■ 官能開発のメールマガジン
■□■ ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■ 発行者:日本オリエンテーション
■□■ 毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.21□■
官能を使って価値を開発する【官能開発】のメールマガジンです。
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同 高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英の共同メルマガで、回を重ねて21号になります。
◆INDEX
1.『消費者の官能武装と情報武装』大西正巳
品質意識が高まりつつある中で、官能力と共に製品(品質/つくり)に関する情報収集力や知識欲をスパイラルアップしている消費者が目立ちます。
2.『QDAでモノつくり文化を全社的に共有化しよう』高橋正二郎
QDAの最大の強みは視覚化による情報共有です。QDAによる共有力で、メーカーのモノづくり文化の総力を商品に反映させよう。
■「消費者の官能武装と情報武装」大西正巳
近年の酒類ユーザーの傾向ですが、バーテンダーや流通/業務店関係者のみならず一般のユーザーの官能力/香味的な特徴の識別力が向上していると思います。
品質問題が後押しをしている部分もありますが、若い人の官能力の鋭さと製品知識の豊かさに驚かされることも増えました。例えば何かのきっかけでシングルモルト・ウイスキーを飲む(官能する)ことがあると、その香り・味わいに由来する個性や魅力、そしてそれを生み出す製品関連情報に関心が湧きます。反対にブランド名や造り手の情報が先に入るとその製品(香味)を実際に味わいたい気持ちに駆られます。この二つの動きがお互いに噛みあい、サイクル的に回ることにより香味の官能経験と製品や製造の知識が必然的に増していきます。その結果、特定のジャンルへの思い入れやブランドとの絆(エンゲージメント)づくりに発展することもあります。そして「おいしさ」への単なる共感だけでなく、造り手の哲学/価値観や品質設計のあり方なども含めて共鳴すると、ファンを超えて自発的にアンバサダー/アドボケーターの役割を演じることにもなります。結果的に他人への波及効果は大きくなりますが、個人的な品質イメージの押しつけや官能的な言葉の独り歩きが見られることもあるため、メーカーにとってはプラスとマイナス両面の影響を受けることになります。
この現象の背景には、官能スキルを「ステイタス・スキル(ステイタスのあるモノやサービスを買うだけでなく、それをより深く楽しむための特権的なスキルを修得することに満足を感じること:服飾史家・中野香織氏)」として捉える一面が関係していると思えます。つまり官能スキルを身に付けて使いこなし、同時に製品に関する幅広い知識も出来るだけ保有することにより自己満足や優越感が高まるという意味が含まれます。そして官能評価力の向上や製品知識を得るのに熱心な人は、様々な酒類の検定や資格の取得にも意欲的です。
また酒類の蒸溜所や蔵元あるいは色々な生産現場のツアーが人気ですが、単に興味や好奇心からだけでなく、ステイタス・スキルとしての官能スキルを磨き、製品の生情報を得る絶好の機会と捉える積極派も増えているのだと思えます。そこまでのユーザーではないにしても、五感的に現場に立ち、プロの話を聞き、比較試飲を経験すると、普段は特に官能を意識していない人でもそれ以降は官能的に味わう傾向が強くなります。更にはより自分の嗜好に合うもの、魅力的なものを探索する気持ちも増してきます。ただ、メーカーの責任者が驚くほどの詳細な製造条件や設備仕様の知識と製品の官能数を誇るファンも時々見受けますが、専門領域の情報量の多さをアピールすること自体が最大の目的(喜び)になっているようです。いずれにせよ多様なユーザーと状況の中身は、それぞれの層や特性に応じたブランドと飲用場面、製品(品質/つくり)情報、各種仕掛け(イベントやセミナー/試飲会)等の訴求ときめ細かいマネジメントがより大切になることを意味していると思います。
■「QDAでモノつくり文化を全社的に共有化しよう」高橋正二郎
数年前のことですが、洗顔せっけんのメーカーへ官能評価のお手伝いに行ったときのことです。そのメーカーの商品は職人肌の工場長さんが仕切っていて、社長さんも営業担当の常務さんも商品には一切口を出しませんでした。ところが最近、若い技術者から「きちんとした官能評価も必要ではないか」という声が上がり、その熱意に工場長も折れ、実施の運びになりました。幸い、官能評価には工場長さんも関心をもっていただき、ことの推移を静かに見守ってくれました。最後に、でき上がったQDAを報告したところ、「なるほど」と頷いて、好意的に受け止めていただきました。今後の商品の価値創造につながる利用法にも一定の理解を示していただき、まずは成功でした。
ところが、その先がいけません。「社長さんへの報告は、どのようにしましょうか」と問いかけたところ、「そんなもの、せんでエエ」という返事には驚きでした。おずおずと理由を尋ねると、「訳のわからん人に、余計なものは見せん方がエエんです」ということでした。「営業担当の常務さんには?」と問いただすと、「あのような人に見せたら、せっけんがせっけんでなくなってしまう」と、けんもほろろです。
QDAは官能というわかり難い情報が視覚化され理解しやすくなっているので、必要な部署には開示して情報の共有化をはかるべきです。これにより、自社品の市場での位置づけも明確になり、マーケティング上の対策も具体的にとれることになります。また、お客さまの要望や社内の知恵を商品の向上に集中することできます。それでも何を思ったか、工場長は開示に反対なのです。
工場長にしてみれば、自分の思っていた通りのことが定量的なデータによって客観化されたことになります。さらに、定量化されたデータによって視覚化され、工場長自らが築き上げてきた技術体系は誰から見てもわかりやすくなり、技術伝承に見通しもつきました。これらのことは大きな喜びである筈でしょう。ところが工場長の心配は、視覚化によるわかりやすさが部外者へも情報が伝わりやすくなることでした。配合成分などとは異なり、官能レベルの情報が伝わったことによるリアクションを恐れていたのです。工場長から見れば門外漢からの意見が言いやすくなり、意見への対応が面倒に思えたようです。
メーカーには企画部門と研究開発部門との間に深い溝や高い壁があり、意思の疎通がうまくいかないことが往々にしてあります。この溝を埋め、壁を突き崩すためには情報の共有化が欠かせませんが、その最適な解決策が情報の視覚化です。官能の情報も両部門には必須の情報ですので、視覚化による共有を進めて欲しいものです。
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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。お待ちしています。
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・SDP研究所の官能開発のカウセリングを導入してみてください。
・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。
■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。
■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを30年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。
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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第21号(2014/04/01) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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